シーンの成熟に暗い影を落とすラップ・ゲーム(from NEW YORK)
ヒップホップは文化だが、ラップ・ゲームは質の悪い格闘技だ。いや、格闘技はルールがあるスポーツだから、それですらないかも。いまシーンの頂点に立つ50セントが、義弟分のゲームを相手に大暴れした。ゲームはドクター・ドレーと50のバックアップを得た大型新人と騒がれ、デビュー・アルバム『The Documentary』をドロップしたばかり。そして、50が超話題のニュー・アルバム『The Massacre』のリリースを翌週に控えたタイミングでこの事件は起きた。ゲームがまずHot97に出演して50を挑発、それを受けて50は彼をGユニットから除名し、こき下ろしたことで、ついに取り巻き同士の発砲事件となり、ゲーム側の1人がケガを負った。その直後、50のマネージメントを担うヴァイオレーターのオフィスでも発砲事件が発生したのだ。ゲームは西海岸のコンプトン出身、ミックステープ・シーンで人気が出てドレー&50に見初められた、という流れだが、キャラが被っているせいか、実は50とはウマが合わなかったらしい。ジャ・ルールとの確執が一段落したかと思ったら、ナズやファット・ジョーにケンカを売る50にゲームがついていけなかった、との説もあるし、50は50で「ドレーやレーベルが自分よりゲームに力を注いでいた」と嫉妬心を露わにしている。「インタースコープは西の会社だから、NY出身の俺より奴のほうが大事なんだ」って……レコード会社は企業、いくらヒップホップに強いレーベルだからといって、そんな〈ギャングスタ〉なメンタリティーを持っているわけがないでしょ? 大丈夫か、50? とはいえ、50の新作は間違いなく売れるし、来年あたりはゲームのほうが消えている可能性は高い。ハリウッド・スター並みの話題作りだとしたら、さすがはプロ、と褒めるのもアリだが、おそらくただの仲間割れだろう。史上最高のラップ・スターの一人、50セントが真のヒップホップ・アーティストに育つのはいつの日だろうか? 2パックの二の轍だけは踏まないでほしい。心配。(レポート/池城美菜子)
(その後、ゲームが休戦を宣言して事態は収束に向かった模様:bounce編集部)







