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思わぬ場所から噴出した人種問題の闇(from NEW YORK)

 NYのヒップホップ/R&Bラジオ局、Hot97が南アジアで起きた津波災害をパロディーにして大ひんしゅくを買っているというニュースはすでに伝わっていると思う。“We Are The World”を下敷きに、被害者が波にさらわれる様子をアジア人の蔑称を織り交ぜて曲にし、〈ミス・ジョーンズ・モーニング・ショウ〉で数回放送した事件だ。現時点でマクドナルドがスポンサーを降り、局側は謝罪と共に被災地へ100万ドルを寄付すると発表、コ・ホストのトッド・リンがクビになったが抗議は続いている。あたりまえだ、メイン・ホストのミス・ジョーンズは出演自粛のみで、復帰する気配があるのだから。この一件、残念とか腹が立つとかいう次元を超えて理解不可能。大災害をどうして茶化すのか。黒人音楽をプロモートする局のホストがなぜアジア人をあざ笑うのか。スタッフのミス・インフォが番組中に抗議したのに対し、ジョーンズは「アジア系だから過剰反応するのよ。アジア系は上だと思っているんでしょ」とのたまった。これで人種問題に発展したわけだが、アリーヤの飛行機事故をパロディーにしたときと同じく、人命をおろそかにする大たわけ加減が問題だ。ジョーンズはモータウンに所属していた元シンガー。アメリカでは、中途半端なシンガーより、全米のアーバン系ラジオ局がそのフォーマットを真似しているHot97のホストのほうが業界内では有力だ。そのパワーを武器にやり過ごすつもりなのかも知れないが、甘い。辞める以外に道はない。人種差別というと、マジョリティー対マイノリティー、つまり白人社会が有色人種を不当に扱うイメージがあるが、マイノリティー対マイノリティーという図式の場合もある。筆者がNYで受けたあからさまな嫌がらせは、黒人やほかのアジア系からやられたほうが多い。自分もやられているんだから、との心理なのだろうか。この心理の悪循環を断ち切らないと、こういう事件はなくならない。呆れると同時に、自分もほかの国籍/人種の人々をステレオタイプで見ていないかチェックしよう。(レポート/池城美菜子)

掲載: 2005年02月25日 16:00

更新: 2005年02月25日 17:03