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インタビュー

サカキマンゴー

親指ピアノで世界をぐるぐるする男、サカキマンゴーの新作

親指ピアノ奏者のサカキマンゴー率いるサカキマンゴー&リンバ・トレイン・サウンド・システムの新作『オイ!リンバ』が到着した。聴く前は、革新的な内容で各方面から絶賛された前作『リンバ・ロック』の流れを汲む音を想像していた。ところが、今回もサカキマンゴーらしさは溢れているが、全体の雰囲気はかなり違う。前作で顕著だった電化された親指ピアノのディストーションのかかったサウンドは、今回はあまり目立たず、よりアンサンブルを重視したような印象だ。さらなる進化に驚かされた。

「前作は〈歪み〉というのがひとつのテーマだったので、ああいうサウンドになったんですが。今回のアルバムは〈コンセプト在りき〉で作っていないというのも特徴ですね。それに、これまではライヴでやってきた曲を録音するというパターンが結構多かったんですが、このアルバムに関しては、録音する段になって作った新曲が多いんです」

鹿児島弁で歌うナンバーも相変わらず面白い。今回はその比率も増えた。

「鹿児島弁に特にこだわっているというわけではないんですが、イントネーションが独特なんで、鹿児島弁で曲を作ると不思議と言葉とメロディーが同時に出来るんです。標準語だとこうはいかない。そこが面白いですね。今後ももうちょっと究めてみたいと思いますね」

前作が注目されたことで、サカキマンゴーを取り巻く環境は大きく変わった。彼自身はその変化は歓迎すべきことだと言う。

「最初のアルバム(2006年の『limba train』)を出した時は、取材を受けても〈珍しい楽器を演奏する日本人〉という観点のものばかりでしたからね(笑)。前作を出してからは、ライヴでもテクノ系の人なんかとブッキングされることも多くなったんですが、そういうお客さんの前で演奏するのは好きですね。アフリカン・カルチャーとしてではなく、音楽として聴いてくれるのが何よりも嬉しい」
7月には『サカキマンゴーの親指帝国ツアーEAST』と題して、福島・宮城・岩手で計5回のソロ・ライヴを敢行。以前から何度もライヴで訪れていた東北の震災後の惨状にショックを受けたが、同時に素晴らしい体験もした。

「特別なツアーでした。特に最後の2日間(石巻と岩手県東磐井郡藤沢町)のステージで得た感覚というのは、これまで経験したことのないもので。トランス状態というか、演奏している自分と観客がひとつに〈溶けた〉という感じ。演奏が終わっても拍手も起こらないくらい(笑)全員がどっかにイッちゃってた。ああいうのを経験しちゃうと、やめられないですね」

これを聞いて、以前彼から教えてもらった、タンザニアで霊を呼ぶ儀礼に親指ピアノが使われていた話を思い出した。東北で体験したというその感覚は、彼の演奏の力はもちろんだが、親指ピアノという楽器の持つ力も大いに関係しているのではないかという気がしたからだ。エレキ・ギターでは、たぶんそんな事は起こらなかっただろう。

 『「オイ!リンバ」発売記念ツアー』

10/1(土)WATTS(浜松)
10/2(日)月見ル君想フ(南青山)
10/3(月)TOKUZO(名古屋)
10/7(金)鰻谷 燦粋(大阪)
http://sakakimango.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年09月05日 12:16

更新: 2011年09月05日 12:22

ソース: intoxicate vol.93 (2011年8月20日発行)

interview & text : 篠原裕治