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インタビュー

木村達司(dip in the pool)

14年ぶりに新作『brown eyes』を発表!

80年代後半から90年代にかけて、シャーデーやエブリシング・バット・ザ・ガール、アンテナといった所謂〈お洒落〉サウンドと共に、dip in the poolの音楽は、その無国籍風な空気そのままに、FMやCM、カフェの至る所から聞こえていた。が、その後1997年のCDリリースを最後に活動休止。 dip in the poolは、長い沈黙に入る。1983年、作/編曲:木村達司と、当時ファッションモデルとしても大活躍していた詞/歌:甲田益也子の二人により結成されたdip in the pool。85年、U.K.の名門レーベル【Rough Trade】、そして国内では【Moon Records】からアルバム・デビュー。当時の録音には、サックスの清水靖晃、ギターの窪田晴男、さらにはトニー・レヴィン、ミノ・シネル、アンビシャス・ラバーズのピーター・シェラーといった錚々たる面々も参加していた。その彼らが、なんと14年ぶりにニューアルバムを発表し、本格的に活動を再開する。主にサウンドを担当する木村達司に話を聞いた。

──14年という長い沈黙。また突然の活動再開の理由は?

「職業として長く音楽に携わってきて、正直少し疲れた部分もあったのかな。音楽制作そのものにではなく、その周辺的な調整作業に疲れてしまったと言うか…。で、たまたまプライベートな理由もあり、那須に移住して、のんびりと過ごしていました。那須はとてもいいところだったけど、さすがにサブカルチャー関連の刺激は少なかった。で、そろそろまた東京に戻ろうか、と思い始めた時、アルバム制作の話をいただき、今回の新譜が出来上がりました」

理由は拍子抜けするほど、ごく自然な成り行きであった。
──活動開始した頃と現在で心境の変化は?制作動機は?

「多少のリハビリはありましたけど(笑)制作意欲はずっと持続していたので、(制作は)自然な感じでしたよ。作り方も以前同様、基本的には僕が曲作りを先行し、その後、甲田が詞をつけるという一貫したプロセス。もちろんキャッチボールはしながらね。以前と違うのは、スタジオ作業だけでなく、今は(デジタル技術のおかげで)家に持ち帰ってまた延々と作業ができるようになったことかな。だから締め切りがないと作業が延々と終わらなくなってしまった(笑)。それだけ妥協なく丁寧に作れるとも言えるけれどね」

今回アルバムに収録された6曲も、その内容は、どこまでもハイブリッド無国籍風サウンドだ。全編英語で歌う甲田の歌は、まるでネイティブのそれのように、流麗かつ自然。聞けば木村は、私生活でもほとんど邦楽ポップスは聴かないという。そして、dipの場合、サウンドとの関係性、つまり音の響きという観点からも、歌詞は英語の方がフィット感はある、とも言う。英語で歌うことにより、すぐに100%〈意味〉として解釈されることを避け、まずはあくまで〈音そのもの〉として届けたい。そうしたこだわりがアルバムに染み渡っている。マスタリング・エンジニアには、 U2、Sade等数多くの作品を手掛けるロンドン、メトロポリス・スタジオのJOHN DAVISが担当。

「本心から今までで一番好きなアルバムです。作っている過程で一番じっくりと聴き込んだこともあるし、甘えずに、妥協せずに作ったから」

一曲一曲が、それぞれ別の惑星のように個性的でありながら、アルバム全体としては宇宙のように見事にひとつの世界をつくりだしている。一つの惑星から別の惑星へ旅をするように、アルバムを聴くことができる。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年05月12日 18:16

更新: 2011年05月17日 21:36

ソース: intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)

interview&text:前田圭蔵