こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

T-SQUARE

「いいメロディを、楽器を通して歌いたい」
──安藤正容(T-SQUARE)インタヴュー

人気、実力ともに日本のトップを行くフュージョン・バンド、T-スクェア。新作『ナイン・ストーリーズ』は37枚目のアルバムになり、これまでになくメンバーがアレンジなどに意欲的にチャレンジしたものになっているという。リーダーでギタリストの安藤正容がその特徴を語ってくれた。

「みんな新しいものを追い求める人たちばかりなので、アレンジや作曲面でいろいろなことをやっていますね。例えばドラムスの坂東くんなんかは若いなりに、ストリングスやブラスなんかを打ち込みで自分でアレンジしてみたり、僕も今までにやったことないような、曲の最後にウクレレと口笛でアウトロ的なものをやってみたり。口笛って自分の体を鳴らして音を出すものなので、そういうのを自分でやるのははじめてだったので楽しかったですね。そんな要素もありながら、この新作は前作のアルバム『時間旅行』の1曲目のポップさをさらに広げたような内容になっています。それって僕からするとどこかJ-POPを意識したようなところもあり、コアなT-スクェア・ファンじゃなくて、普段J-POPを聴いている人にも楽しんでもらえたら、なんて思っているんです。今回はアルバムのコンセプトを決めることはせず、メンバーおのおのが曲を持ち寄った結果で出来上がったような形になり、それがそれぞれのストーリーを持っているということでこのタイトルになりました」

キャッチーなサビを持つものから、ストレートなビート&サウンドで飛ばす全9曲がアルバムには収録され、メンバーそれぞれの個性が反映されている。元々のメイン・コンポーザーの安藤正容、そしてサックスの伊東たけし以外の若手二人が曲を提供することで、バンドには新風が吹き込まれているようだ。

「今回坂東くんが3曲書いた以外はみんな2曲づつ書いているんですけど、坂東くんやキーボードの河野くんみたいに若い世代のメンバーが曲を書くと、バンドもどこかリフレッシュされている感じなんですね。実際彼らは本当にいい曲を書いてくるので僕なんかタジタジなんですが(笑)。でもこういう若いメンバーを入れようと思って入れたわけでなく、結局全部出会いなんですよ。どちらも昔にT-スクェアを聴いて育ってきた人たちで、今そういう人たちがバンドのメンバーになっていっしょに演奏できているなんて頼もしい話ですよね。またその坂東くんのドラムスを聴いて若い人たちが刺激を受けてくれるといいなと思いますね。ギターとサックスの人は年いっているけど、ドラムの人は若くてカッコいいわ、みたいな女の子がいたりすると思うんです(笑)」

フュージョン・バンドというとテクニックで聴かせる音楽と思われているところがあるが、T-スクェアの場合はそこにプラスしてポップなメロディ・ラインが持ち味。

「今回のアルバムの曲もT-スクェアらしい印象的なメロディはどの曲にも重要な要素になっています。僕はビートルズをはじめ洋楽を聴いて育った世代ですが、最近は洋楽にいいメロディを持ったものが多くなく、そういう意味ではJ-POPなんかにヒントを得ることの方が多いですね。J-POPのメロディそのものに影響を受けることはないですが、その歌詞の乗せ方とか洋楽にないアレンジに触発されることはありますよ。最近だと、〈いきものがかり〉なんて面白いなと思いましたね」

音楽というものはその歴史を見ていくと、メロディのいいものはいつまでも残っていくという傾向がある。多くのフュージョン・バンドがインストならではの楽曲の構造やインプロヴィゼーションを売りにするのに対し、T-スクェアの楽曲は歌ものと同じ形式の構造を持つことが多く、インプロヴィゼーションはあるにはあるが、それが曲を支配するようなものではない。

「インストやっていても伊東さんも僕も歌っている気持ちで楽器を吹いたり、弾いたりしているつもりなんです。歌を歌ってもうまくないので楽器で歌うしかないなというのもありますが。伊東さんはジャズやスタンダード・ナンバーも好きでそういう演奏もしますが、基本はメロディが大好きな人間なんですね。僕もインプロヴィゼーションはもちろん好きですけど、いいメロディを弾きたいな、っていうのがまずあって。過去のメンバーだと和泉宏隆くんもそうでしたね。T-スクェアにかかわっている人たちっていうのはとにかくいいメロディを楽器を通して歌いたいんじゃないかなと。インストではあるんですけど、自分の気持ちの中では歌っているんですよね」

7月には新作『ナイン・ストーリーズ』のコンサート・ツアーが行われる予定だ。またドラムスの坂東慧が7月13日に待望の初ソロ作のリリース予定があり、この他、秋口ぐらいには昨年のセルフカヴァー作のようなアッと驚くような話題で盛り上がるかもしれない。

『T-SQUARE Concert Tour 2011 “Nine Stories”』
7/16(土) 開場 16:30/開演 17:00
会場:大阪:なんばHatch
 
7/17 (日) 開場 15:30/開演 16:00
会場:名古屋:Zepp Nagoya

7/24(日) 開場 15:30/開演 16:00
会場:東京・渋谷 C.C.Lemonホール

詳細はhttp://www.tsquare.jp/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年05月02日 21:20

更新: 2011年05月02日 22:10

ソース: intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)

interview & text : 馬場雅之(タワーレコード本社)