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インタビュー

高嶋ちさ子

「自分で新しいクラシックの名曲集をつくりたい」
──デビュー15周年記念アルバムには、最高に美しいメロディを

「15年」を記念するアルバムという。

「デビュー当時は特にしたいこともなく、できることが何なのだろうと模索していたところから、10年目にしてやりたいことができるようになって、そして今ようやく歩きだした、というかんじでしょうか。小品を弾きおしゃべりをいれたコンサートをやる、『12人のヴァイオリニスト』をやる、とかね」

以前は、「やりたいこと」ができなかった、と?

「たとえば、15年前、高嶋ちさ子が『12人のヴァイオリニスト』をやりたいと思ってもできるわけがないんです。ネームヴァリューもないし受け皿もない。やりたいと思うこと自体が罪みたいな。いろいろな意味で実力がないというのは、やれることが制限されてしまう。10年以上やってきて、それなりにやりたいことができるような環境になってきた。はじめてやりたいことを発表できるようになるわけです」

「やりたいこと」がないわけでなく、実現可能性がない、ということ?

「ええ、やりたいこと、というか、夢に近かったかもしれない。どうすれば、一人でも多くのお客様が会場に来て下さるのか・・を常に考えていました。逆にいえば……《タイス》と《チャルダッシュ》と《ツィゴイネルワイゼン》ばっかり弾いてて、どこかに、もう勘弁してくれ、というのがあるのかもしれないし(笑)」

今度のアルバムも小品集になっていますが。

「わたしがやるんだったらソナタとかじゃなく、小品集ですね。かといって、過去の素晴らしいヴァイオリニストの小品集などいくらでもあり、なぞっても意味がない。だったら、自分で新しいクラシックの名曲集をつくりたい。そうした曲がいつしか定番になってくれたらいい。もしクライスラーみたいに作曲ができたら、もっといいんですけれど」

〈ソナタ〉ではいけませんか?

「今は、ソナタを弾くことにあまり興味がない、ということですかね。自分が聴きに行くのはすごく好きなんですよ。ただ、いまの自分には合わないなと思う(笑)」

多くのひとにクラシックを聴いてもらうという意図もありますか?

「いままでコンサートにいらしていただいたり、CDを買ってくださったりした方たち、高嶋ちさ子っていいよねと言ってくれる人たちを、1人も裏切りたくないという気持ちがあるんです。そこで、わたしが一発ソナタをやったら、半分いなくなるんじゃ、と(笑)」

うたわせるもの、メロディ・ラインを重視するものが中心になりますね。

「100人が聴いたら、100人がステキな曲だなと思ってもらえるような、耳あたりのいい曲が、弾いていても楽しいし、聴いていらっしゃる方のうっとりとした表情をみると達成感があるんです。15年間、《チャルダッシュ》《ツィゴイネル》をやり、ウケはいいんですよ。でも、良かったなと言ってもらえるのはやっぱりゆっくりした曲が多いんです。(師匠の)徳永二男先生が、テクニックでひとを驚かすことはできても、ひとのこころを動かすことはできない、と仰っていたのを想いだしたりもしますし。ばりばり弾いて、驚かすようなものもしてみたいけど、それは聴きに行くだけでいいのかな、と(笑)」

どんなふうに選曲をされたのでしょう?

「30曲くらい候補があって、そこからいろいろ考えていきました。リスト・イヤーだから《愛の夢》、ハチャトリアンぽくないハチャトリアンの曲、……。はじめはヴァイオリンとピアノだけと思っていましたが、〈12人〉もいれたいねと広がっていったなかで、意表をつくような12人の使い方をしたい、というのもありました」

最後には自作もあります。

「自信のないものを世にだすのは恥ずかしいし、作曲の成績はけっして良くなかったし……。ただ、純粋にアタマにうかんだものをぱらぱらっと書いてというようなポップス系の方の話などを聞くと、羨ましいんです。compositionというふうに考えると、これって間違えてるんじゃないか、とか思ってしまうんですね。でも、今回はそうしたのを取り払って、自分の想いを素直にそのまま書いてみました。ボーナス・トラックみたいなもので……(笑)」

『女神たちの饗宴 高嶋ちさ子 12人のヴァイオリニスト』

出演:高嶋ちさ子(vn) 12人のヴァイオリニスト 近藤亜紀(P)
演奏曲目:愛の三部作(愛の挨拶~愛の悲しみ~愛の喜び)
ビゼー/サラサーテ:カルメン幻想曲
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
マスネ:ダイスの瞑想曲 ほか

4/23    (土)    新潟・新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ
4/24    (日)    長野・まつもと市民芸術館
4/30    (土)    東京・サントリーホール
5/7    (土)    大阪・ザ・シンフォニーホール
5/8    (日)    静岡・湖西市民会館
5/13    (金)    北海道・札幌コンサートホールKitara
5/15    (日)    北海道・釧路市民文化会館
5/28    (土)    東京・オリンパスホール八王子
6/1    (水)    茨城・ひたちなか市文化会館
6/4    (土)    愛知・愛知県芸術劇場コンサートホール
6/5    (日)    千葉・東総文化会館
6/11    (土)    岡山・岡山公演
6/12    (日)    香川・香川公演
6/19    (日)    神奈川・秦野氏文化会館
6/29    (日)    埼玉・さいたま市民文化センター
8/24    (水)~8/28(日)北海道・北海道4公演
9/3    (土)    滋賀・守山市民ホール
9/4    (日)    京都・宇治市文化センター
9/10    (土)    群馬・伊勢崎市文化会館
9/11    (日)    埼玉・草加市文化会館
10/2    (日)    広島・広島公演
10/29    (土)    栃木・真岡市民会館
10/30    (日)    宮城・名取市文化会館
11/12    (土)    東京・保谷市こもれびホール
11/13    (日)    福島・会津風雅堂
12/10    (土)    福井・フェニックスプラザ大ホール
12/11    (日)    愛知・西尾市文化会館(予定)
12/23    (金・祝)大阪・SAYAKAホール
12/24    (土)    奈良・やまと郡山城ホール

●2012年
1/28    (土)    三重・川越町あいあいホール
1/29    (日)    岐阜・長良川国際会議場
2/11    (土・祝)    兵庫・兵庫公演
2/12    (日)    兵庫・兵庫公演

http://www.j-two.co.jp/chisako/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年04月26日 19:22

更新: 2011年04月26日 20:09

ソース: intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)

interview & text : 小沼純一(音楽・文芸批評家/早稲田大学教授)