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インタビュー

鈴木大介

イタリアのダンディズムに迫る~『キネマ楽園』第4弾!

鈴木大介が映画音楽カヴァー集『キネマ楽園』の4枚目をリリース。今回はイタリア映画音楽の巨匠ニーノ・ロータの世界観を集めた珠玉のラインナップで、ゲストプレイヤーに松尾俊介(ギター)、吉野弘志(ウッドベース)、北村聡(バンドネオン)、芳垣安洋(ドラムス、パーカッション)を迎え、ジャジーな仕上がりだ。

「生誕100年を迎えるロータの作品で演奏会を、という話をいただき、ゲストプレイヤーを決めた段階で、演奏会の前に『キネマ楽園』録音を、となりました。演奏会は『東京・春・音楽祭』の1公演として3月25日に行います。ロータの音楽は都会的であると同時にカンツォーネがベースにあり、クラシカルなものと、ジャズやロックなどのイディオムがミックスされています。作品性や構築性が高く、緻密さにこだわった人だと思います。非常に制御された彼の音楽を再現して録音するとなると、ライヴ感よりも、必要な音を選ぶ作業が常に求められます。それで全て譜面に書きました。譜面にしてないのは、瞬発力や切れ味で魅せる芳垣さんのドラム・パートだけです」

ニーノ・ロータは、伝統的な作風や形式を大切にしたクラシックの作曲家だが、彼の名を世界的にしたのは映画音楽での活躍。ロータの音楽との最初の出会いは?

「映画『ゴッドファーザー』です。歌いあげる作曲家だなと思ったら、背景にやはりカンツォーネがありました。カンツォーネは、一般にはテノール歌手が絶唱する印象が強いけど、声の力に頼らない唱法の正統派歌手にロベルト・ムローロがいます。彼は詩と魂を語るように、ギター伴奏でカンツォーネを歌う。ロータの音楽に感じられるのは、まさにそのムローロのカンツォーネです」

ニーノ・ロータの音楽をアレンジして弾く際は、周到にアレンジしないと壊れる。それほど原曲の閃きは「凄い」という。「ロータの偉大さは、彼の音楽で遊んでみるとよくわかります。メロディの半音の動きや、ベースの音程のたわみ感といった微妙な揺れをきちんと汲み取らなければなりません。今作のアレンジにおける僕のこだわりは、イタリアのダンディズムです」

特にお勧めの曲は?「ドラムとギターで弾いている《Parlami di me》ですね。バンドやギター・デュオ、ギター・ソロが混在する今作で、それらをつなぎとめる存在です。このデュオ曲が入ることで、一つのコンセプトで貫かれているのが見えてきます。アルバム全体は、最高の出来栄えになっていると思います」

次の録音プロジェクトは?

「2年越しで進行中のものがあります。9月11日発売予定です。米国同時多発テロ〈9・11事件〉から10年。歴史上、イスラム教徒とキリスト教徒とユダヤ教徒が友好的に暮らしたことのあるスペインを思い出そうということで、『エスパーニャ・ロマンティカ』(仮題)『エスパーニャ・エキゾティカ』(仮題)を同時に出します。お楽しみに!」

鈴木大介 ライヴスケジュール
2/27(日)横浜みなとみらいホール 小ホール
3/5(土)ホワイトキューブ
3/25(金)東京文化会館 小ホール [東京・春・音楽祭−東京のオペラの森2011−ニーノ・ロータへのオマージュ〜イタリア映画音楽の巨匠に捧ぐ] 

http://daisukesuzuki.at.webry.info/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年02月21日 14:22

更新: 2011年02月21日 14:47

ソース: intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)

interview & text : 横堀朱美(音楽ジャーナリスト)