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インタビュー

Cheryl Bentyne

ガーシュウィンの歌の魅力を、新鮮なアプローチで表現

あのコーラス・グループ、マンハッタン・トランスファーで活躍すると共に、積極的にソロ活動も続けているシェリル・ベンティーン。前作『コール・ポーター・ソングブック』に続いて、今年は『ガーシュウィン・ソングブック』をリリース。素晴らしいサポート・メンバーたちに恵まれ、まさにジャズ・ヴォーカルの醍醐味を教えてくれるアルバムとなっている。「プロデュース&ピアノのコリー・アレンを初め、私を常に支えてくれているリズム・セクションのデイブ・タル(ドラム)、ケヴィン・アスクト(ベース)とは、本当に一緒に息をしているような感じなの。加えて、今回はテッド・ハウに4曲のアレンジ&ピアノをお願いして、それが新しい色彩を加えていると思います。同時に、クラリネット奏者のケン・ペプロスキーは現在最高の奏者で、前から彼のグリッサンドを《ラプソディ・イン・ブルー》で聴きたいと思ってきたけれど、それが今回ようやく実現して、とても嬉しいわ」

ジョージ・ガーシュウィンと言えば、ポピュラー・ミュージック、ミュージカルの世界で最も活躍した作曲家だが、オペラを書くことも夢見ていた。「彼はジャズとクラシックの境界をやすやすと超えた人。ブルースの影響をクラシックの書法で表現した人で、そんなことは誰にも出来なかったこと。クラシックにあまり触れてない人も、ジャズにあまり触れてない人も、どちらからも楽しめる作品を作った人と言えるでしょうね」

歌詞を書いたのは主に兄のアイラ・ガーシュウィンだった。

「アイラは他の作曲家にも詞を提供しているけれど、ジョージとのコンビがベストだと思う。アイラの歌詞はまさにメロディの一部になっているわ」

今回のアルバムの中でのハイライトのひとつが、《サマータイム》でマイルス・ディヴィスのソロを再現していること。歌と楽器の違いなど、難しい点も多そうだが。「書かれた歌詞を歌うのとヴォカリーズはまったく違っていて、両方とも難しいことに変わりはないわ。今回はマイルスのソロをヴォカリーズした訳だけど、まず歌ではなく楽器になる、という感覚ね。そこで、ソロの意味を考えながら、出来る限りその奥まで行こうとします。単にメロディ・ラインをなぞるのではなく、その音符のエモーションを表現しようと試みる。今回はさらに、そこにアイラの歌詞を乗せて歌った訳だけれど、アイラが気に入ってくれるといいわね(笑)」

収録された《レッツ・コール・ザ・ホール・シング・オフ》ではデュエットも披露しているが。「一緒に歌ってくれたのは、マーク・ウィンクラー。彼とは一緒に仕事もしているし、優れた音楽教師でもあり、またミュージカルの台本も書く、多才な人です」

シェリル自身が一番お気に入りのガーシュウィン・ソングは《バット・ノット・フォー・ミー》だと言う。美しいメロディの奥に秘められた様々な感情を豊かに表現するシェリルのヴォーカルは、まさにこの季節に嬉しいギフトだ。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年01月11日 12:27

更新: 2011年01月11日 12:32

ソース: intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)

interview & text : 片桐卓也