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インタビュー

映画『ニューヨーク, アイ ラブ ユー』岩井俊二監督インタヴュー

11人の監督がさまざまな愛の形を描いたアンサンブル映画『ニューヨーク, アイラブユー』に、日本から岩井俊二監督が参加。近頃は、『ハルフウェイ』や『BANDAGE バンデイジ』など、プロデューサーとしての活躍が多い彼にとって、3年ぶりの監督作となった本作。岩井作品の魅力である繊細な空気感と映像センスは健在で、顔の知らない男女の交流がロマンチックに描かれる。

映画作曲家のデイヴィッド(オーランド・ブルーム)のもとに、会ったことのない監督アシスタントのカミーユ(クリスティーナ・リッチ)から電話が入る。『ドストエフスキーの小説を読んで曲を作れ』という監督からの指示を聞いた彼は、巨編小説を手に、カミーユと会話を重ねる。

「僕はわりと現実逃避的なネタが好きなんだと思います。そういうものはメインテーマとしてあるかもしれません。ニューヨークは、そこに住んでいる人たちにとっては大好きな街。その情報量やイメージには最初から勝ち目はないと思っていました。ある種、外国人が大阪を作るというような感じになってしまう。だから僕は今回あえてニューヨーク、ニューヨークしたものは作らずに、ロシアの小説家であるドストエフスキーのエピソードを入れたんです」

劇中のオーリーの姿に驚くファンも多いだろう。無精ヒゲを生やし、頭もボサボサ。これまで見たこともないダラしない格好のオーリーがスクリーンに登場するのだ。

「オーリーは、役柄をボロボロにすることに勝負をかけている感じでした。主人公は3日も4日も寝てないヤツで、部屋も散らかっている。映画の中で来ているTシャツは、彼が自前で持ってきてくれたものなんです。『10代のときから、これだけは捨てられない』なんて言ってましたね。オークションで売ったら大変なことになるだろうなと思いました(笑)。オーリーは僕よりもはるかにこの作品を愛しているかもしれません。ある日突然 『今から来てくれないか?』と電話がかかってきて、彼の自宅に行ったこともありました。目の前で、『こんな感じか、こんな感じかな』って演じて見せてくれた。日本ではそういう人には会ったことはありません。現場のプロフェッショナリズムも日本と比較にならなかったですね。監督が『こうしたい、ああしたい』と言っていれば、全部できあがる。監督にとっては天国ですね(笑)」

多彩な監督とキャストが集った本作で、ハリウッドデビューを飾った岩井監督。あらたなグラウンドで経験を積んだカリスマ監督のさらなる飛躍に期待が高まる。

『ニューヨーク, アイ ラブ ユー/NEW YORK, I LOVE YOU.』監督:岩井俊二/ファティ・アキン/イヴァン・アタル/アレン・ヒューズ/ジョシュア・マーストン/シェカール・カプール/ミーラー・ナイール/ナタリー・ポートマン/ブレット・ラトナー/チアン・ウェン
配給:IMJエンタテインメント+マジックアワー(2009年 アメリカ)
◎2/27 (土)より、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー!
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カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2010年03月05日 12:27

更新: 2010年03月05日 12:36

ソース: intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)

interview&text:鈴木菜保美