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インタビュー

伊藤ゴロー

永遠の名盤『ゲッツ/ジルベルト』録音から50年を記念して

ボサノヴァを世界中に広めたアルバム『ゲッツ/ジルベルト』、その録音から50年ということで完成されたのが、『ゲッツ/ジルベルト+50』だ。伊藤ゴローがプロデュースし、全曲、ギターも弾いている。

「ぼくが初めてボサノヴァというのを意識したアルバムですね。父親が持ってたんですよ。中学生の時ですかね、初めて聴いたのは」

土岐麻子が歌う《イパネマの娘》で幕を開け、naomi & goroの布施尚美、カヒミ カリィ、原田知世等々がオリジナル盤と同じ曲順で再現していく。細野晴臣が、ポルトガル語で歌う《プラ・マシュカール・メウ・コラソン》もある。

「細野さんには、ぼく自身が聴いてみたいという思いがあって、1曲は必ず参加して欲しいと。そうすると、曲も自ずとあの曲になりました」

同曲では坂本龍一がピアノで参加、他にも、アルバムには、山下洋輔から坪口昌恭、鈴木正人、秋田ゴールドマンまで、伊藤ゴローならではの面白い個性が揃った。それでいて、オリジナルへの敬意を重んじた丁寧な演奏で、誰一人欠けても成立しない、何処にも存在しない、少なくともありふれたボサノヴァとは一線を画したアルバムが完成した。

「そもそも、オリジナル盤も、アメリカのジャズとブラジルのボサノヴァがミックスされて、無国籍じゃないかと。それで今回も、ジャズでもない、ボサノヴァでもない、いろんな人が混じりあったミクスチャー的なものをコンセプトとして始めたんです」

オリジナル盤を聴きこむことで新しい発見があったのも、彼には収穫だった。

「殊に、プロデューサーのクリード・テイラーの、音楽をコントロールする力を感じましたね。ジョアンの歌をカットして、アストラッドの歌だけでシングルを出した英断もその一つだし、ジャズという世界は1曲がわりと長いんですけど、4、5分にまとめて、歌と演奏とを飽きないようにポップに聴かせていく。随所に編集された跡もあって、こういうものを作ろうという彼の強い意志が感じられました」

清水靖晃と菊地成孔という二人のサックスが1枚のアルバムの中で聴けるのも、今回の特徴だ。

「『ゲッツ/ジルベルト』とタイトルがつくくらいだから、サックスも主役じゃないですか。最初、1曲ごとにサックス奏者を選ぼうかという案もあったんですが、お二人に吹いていただこうと。キャラクターの違う二人なので、自由に思う存分に吹いてもらいました。その結果、アルバムに統一感がでたし、音色の違いも見える楽しみもあって、本当に良かった」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年06月21日 13:18

ソース: intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)

interview&text:天辰保文