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インタビュー

筋肉少女帯 『公式セルフカバーベスト 4半世紀』



筋肉少女帯



[ interview ]

メジャー・デビュー25周年を迎えた筋肉少女帯が、初のセルフ・カヴァー・ベスト盤『公式セルフカバーベスト 四半世紀』を完成させた。“日本印度化計画”“踊るダメ人間”“香菜、頭をよくしてあげよう”といった代表曲の2013年ヴァージョンに加え、新曲“中2病の神ドロシー”“妖精対弓道部”も収録。超本格的なハード・ロック、ヘヴィー・メタルを取り入れたバンド・サウンド、そして、大槻ケンヂによるまさに〈中2病〉的な世界観を持った歌詞によって、常に熱狂的・偏執的な支持を得てきた彼ら。その特異な存在感はデビューから四半世紀を経たいま、さらに重要な意味を持っているように思う。



〈ロック・バンド〉自体が中2病感に溢れてる



――メジャー・デビュー25周年、おめでとうございます。まず、セルフ・カヴァー・ベストをリリースするに至った経緯を教えてもらえますか?

「まあ、デビューから四半世紀ということですからね。それだけやってきたんだから、自分たちの歴史をもう1回、見直してみようかなという気にもなって。あと、メンバーが当時とは変わってきてるんですよ。三柴理さん(ピアノ)、長谷川浩二さん(ドラムス)にサポートしてもらうことも多いし、彼らとレコーディングしたらどんな感じになるのかな?という興味もあったし」

――当然、バンドのメンバーの演奏テクニックも上がっていますよね。

「筋少、上手いよね! 25年やってますから。もともと上手い人たちだったしね。歌入れは早かったかなぁ。ハード・ロックだから、何回も歌えないんですよ、声が潰れちゃって。だから、ぶっちゃけあんまりスタジオには行ってないです。そこはもう、メンバーの皆さんに絶対の信頼を置いて、お任せしようかな、と。なのでレコーディングのことを訊かれても僕はあまり答えようがないんですが(笑)、最近のライヴの感じを再現してるところもあるのかな」

――しかも、“中2病の神ドロシー”“妖精対弓道部”という2曲の新曲も収録されていて。

「いい曲です。3月にLIQUIDROOMで2デイズ・ライヴがあったんですけど、そのときに新曲をやろうということになって。で、まずタイトルを決めたんですよね。そのときは〈中2病の神アリス〉と“妖精対弓道部”だったんですけど、そのタイトルをお題にして作っていったんです。〈アリス〉のほうは結局、〈ドロシー〉になったんですけどね」

――特に“中2病の神ドロシー”は、筋肉少女帯の本質を描いた名曲だと思います。ちなみに〈中2病〉って言葉、25年前にはなかったですよね……?

「なかったでしょうね。あれ、中2病って言葉はいつからなんだろう? オタクっていう言葉はね、80年代からあったんですよ。中森明夫さんが言い出したのが始まりって、語源もあきらかになってるはず。中2病は誰が言い出したのかな……。そうだ、ちょっと調べてみましょうか(と、タブレット端末を取り出す)。あ、光ちゃんだ!」

――伊集院光さんですか?

「ラジオ番組〈伊集院光のUP’S 深夜の馬鹿力〉のなかで用いたコーナー名に由来する、だって。へー、そうだったんですね。知らなかった」

――中2病というワードに象徴される世界観は、筋肉少女帯の世界観には欠かせないですよね?

「というかね、ロック・バンドというもの自体が中2病感に溢れてると思うんですよ。根拠のない万能感とか、50くらいになっても将来の不安を歌ってる感じとか――まあ、若い頃に作った曲を歌ってるからなんですけど、〈いまさら将来の不安って、老後かよ!〉って思いますよね(笑)。V系のバンドなんて、まさにそんな感じの世界観じゃないですか。もちろん、わがバンドにもそれはあるし。教室の隅にいる女の子を勝手に〈ドロシー〉って名付けちゃうようなDT感。しかもそれを25年もやってるなんて、夢のなかにいるみたいですよ。この曲(“中2病の神ドロシー”)の歌詞の通りです、言ってしまえば」

――〈そのバンド/やり続けてる/25年見てるのは/誰の夢なのか〉っていう。ただ、中2病的なメンタリティーって、かなり市民権を得てますよね。

「そうかもしれないですね。筋肉少女帯の歌詞について言えば、かなり初期の頃から中2病だったり、スクール・カースト、クラス・ヒエラルキーみたいなものに着目してたんです。今回のアルバムのなかの“蜘蛛の糸”という曲がまったくそうですね。クラス・ヒエラルキーからも除外されてしまっているような、夢見がちな少年の歌なので」

――そこに着目したのは、何か理由があったんですか?

「90年代のバンド・ブームというものがあって、マーケティング・リサーチというわけではないんですが、〈どの層のリスナーを掴むか?〉ということをみんな無意思のうちに始めたんですよね。たとえば〈地方のヤンキー層を掴む〉とか〈普通に育った、コンサバティヴで保守的な若者をターゲットにする〉とか。当時、クラス・ヒエラルキーから除外された人たちに対して歌ってるバンドはあんまりいなかったんです。僕は学生時代、まさにそういうところにいた人間なので、〈その人たちに向かって歌うべきだ。そういう人たちの気持ちを代弁するバンドになろう〉と思って。マーケティング的にもいいと思ったしね、嫌らしい言い方をすると」

――自分と同じような人が日本中にいるはずだ、と。

「世界中に、ですね。それは思ってました。確信犯的にそれをやったのは、日本のロック・バンドでは筋肉少女帯が初めてだったんじゃないかな。まあ、それは〈このバンドのなかで歌詞を書いている大槻ケンヂが〉ということですけどね。他のメンバーはまたそれぞれ違う層に向けて音楽を発信してたかもしれないし。一丸となっていないんですよ、いい意味で。それぞれが個人プレイでやってるようなところもあるしね」

――結果的には大正解だったわけですよね、大槻さんの直感が。いまは筋少に通じるスタンスを持ったバンドも増えてるし。

「いっぱい出てきたよね。おもしろいなーと思いますよ、ホントに」


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掲載: 2013年05月29日 18:01

更新: 2013年05月29日 18:01

インタヴュー・文/森 朋之