男性シンガー・ソングライター、LSKのセカンド・アルバム。レゲエやダンスホール、ヒップホップ的なヴォーカル・サウンドを押し出した作品が特徴の1枚。ボーナス・トラック2曲を収録。 (C)RS
JMD(2019/02/01)
2000年夏に突如として現れ、クロスオーヴァーかつ洗練度の高いサウンドでたちまち日本のリスナーにも受け入れられたLSK。しかしそんなファッショナブルなムードに包まれた彼にはもっと生臭く息づくリアリティーや強烈な個性、そしてハングリーな意志も見え隠れしていた。実際、その後の来日公演ではパンク・ ロッカーやラッパーなどを思わせる粗野で等身大なパフォーマンスを見せ、下町のお兄ちゃん的な親しみ易さを醸し出してもいた。そんな印象をもってすれば頷けるものの、前作『Love』の耳触りの良い、メロウなLSKのみを期待する向きには、この新作『Outlaw』は過激なほどに挑戦的だ。なにしろ冒頭から耳に飛び込んでくるのは、巧みなラジオDJぶりとクセのあるレゲエDJ風のヴォーカル。そしてスモーキーでファンキーなダブ、サード・ワールドやバッド・マナーズ、クラッシュのカヴァー……と、アルバムは一貫してこの調子で進行。しかしそれらが彼らしい洗練されたヴォーカル・スタイルと巧みな言葉使い、そして軽やかでポジティヴなスタンスでまとめあげられているところがポイントだろう。LSKと同じく70年代~80年代を超えて現在を生きる30代前後のリスナーならば、その記憶を震わせるような言葉やメロディー、音をきっと見つけることができるに違いない。そしてそこには、トレンディーなものに潔く背を向け、嬉々としてポップ・ミュージックの裏街道をひた走り始めたLSKの姿がある。
bounce (C)ネイシャン
タワーレコード(2003年07月号掲載 (P78))
まず、アルバム・タイトルである『Outlaw』という言葉がひとつのキーワードだ。LSKは自分の音楽を非主流とし、〈アウトロー〉であることを選んだ。ブラック・ミュージックをルーツにしながら、自分の作品を形にしていくプロセスはそれにこだわらない。ここに彼のアウトロー美学(?)がある。デビュー・アルバムとは異なり、今作ではレゲエ、スカ、2トーンの影響が色濃く窺える。サード・ワールドや、スカ・リヴァイヴァル期の重要バンド、バッド・マナーズのカヴァー、ダークなムードのダブ処理……、じつはすべてがLSKのルーツである。ストレートなジャズ、ファンクやヒップホップはあくまでも味付け的な存在。イギリスという地において、レゲエやスカは単なるパーティー・ソングではなくレベル・ミュージック(反逆の歌)として捉えられることが多い。今回LSKはパンクの精神も表現したかったのだという。LSKがレベル・ミュージックとして裏打ちのリズムを全編で鳴らしたのは、アウトローとして当然の方向性だったのかもしれない。日本盤のボーナストラックとして収録されたクラッシュ“Straight To Hell”のカヴァーが違和感なく聞こえてくるのも、イギリスにおけるレゲエ、スカのレベル・ミュージックとしての認識が共通しているものだからだ。お昼寝BGMとして成立させないスリリングなサウンドを優れたポップ・ミュージックとして提示できるLSKの才能が、彼のアウトロー的ポジションを決定づけている。
bounce (C)米田 貴弘
タワーレコード(2003年07月号掲載 (P78))