女性ブラック・マルチ・クリエーターの先駆者、ミッシェル・ンデゲオチェロの通算4枚目のアルバム。ジョージ・クリントン率いるファンカデリックの「ベター・バイ・ザ・パウンド」のカヴァー、ラッパー、タリブ・クウェリをフィーチャーしたナンバー他、全19曲を収録。 (C)RS
JMD(2019/02/15)
いつになくダークで内省的だった前作『Bitter』は、ジャンル分けやカテゴライズすることの無意味さを説いていたかのようなアルバムだった。ただ、そもそもミシェル・ンデゲオチェロの音楽はソウルでもファンクでもジャズでもヒップホップでもなく、同時にそれら全てでもある。現在ではもはやあたりまえとなったジャンル越境型の独立独歩系女性シンガーだが、このミシェルは、いわばその先駆者。それゆえに、デビュー時から確固たる〈私の世界〉を持っていた彼女にはある種の孤高感が感じられた。だが、旧知の(アレン・)ケイトーをプロデューサーに迎えて作り上げた、2年半ぶり、通算4作目となるこのニュー・アルバムはどうだろう。キャロン・ウィーラーやレイラ・ハサウェイ、タリブ・クウェリらをゲストに招き、ロックワイルダーとミッシー・エリオットが手掛けた“Pocketbook”のリミックスではレッドマンとトゥイートが客演……と、そこには〈私の世界〉を開放したミシェルがいる。まるで仲間内でのジャム・セッションのような、いい意味での力の抜け具合が感じられるのはそのせいか。もちろん、みずからが弾くベースで繰り出すドープなファンク・グルーヴは健在。ファンカデリックの75年曲カヴァー“Better By The Pound”ではディアンジェロ的なドロみを放ったり、“Dead Nigga Blvd.(Pt.2)”では、そのファンカデリックにいたマイケル・ハンプトンにジミヘンばりのギターを弾かせたり、相当に土臭い。こんな彼女と張り合えるのはジョイぐらいか。
bounce (C)林 剛
タワーレコード(2002年6月号掲載 (P86))
イコライザーを〈ベース・ブースター〉にしてたからかと思いきや、〈ノーマル〉にセットし直しても響く重低音。そうでした、OKなベース・プレイヤーのアルバムでした。アダルト・オリエンテッドなしなやかさがあった前作『Bitter』もグッとココロに滲み入る作品だったが、活動初期からの経験をすべて呑み込み、さらに上の段階へとステップアップを果たしたといえそうな4枚目のアルバムは、聴き応え十分なヴァリエーションがある。意欲的。ファンク・ドクター(レッドマン)やキッド・ファンカデリック(マイケル・ハンプトン)の参加、ファンカデリックのカヴァーも含め、ファンキーな彼女の姿というのも久々な印象。フィジカルな欲求も満たしつつ、タリブ・クウェリが好演する“Hot Night”には社会批判が込められていたりと、ポエトリー気味に語られるリリックは相変わらず深遠なフレーズだらけ。ギル・スコット・ヘロン“Comment #1”ほかを組み合わせた“Akel Dama”のアイデアにも驚かされた。チンパンジーも聴き入る清く美しい一枚――10年ほど前に本誌の編集者として、デビューしたての彼女に取材したことを思い出した。そのころの彼女はオルタナティヴな存在で(いまでもか!?)、当時のアシッド・ジャズ文脈で語られることも多かった。ならば、新作を現在のジャズ/エレクトロニカと並べて聴くのも悪くない。R&B志向の処理はよく耳にするし(例えばジャザノヴァ)、キャロン・ウィーラーやレイラ・ハサウェイらが参加し、ケイトーのプロデュースも冴えるヴォーカル・アレンジは聴き損ナシ。例えば“Priorities 1-6”とか。
bounce (C)栗原 聰
タワーレコード(2002年6月号掲載 (P86))