魂の輝きと哀愁が交錯するシューベルト最晩年の傑作を椿三重奏団で聴く。椿三重奏団:『音楽の友』誌"あなたが選ぶクラシック・ベストテン"室内楽部門第5位。 (C)RS
JMD(2026/03/13)
【魂の輝きと哀愁が交錯するシューベルト最晩年の傑作を椿三重奏団で聴く】
椿三重奏団:「音楽の友」誌「あなたが選ぶクラシック・ベストテン」室内楽部門第5位
大曲と小宇宙を一枚に同居させたこのディスクは、椿三重奏団が近年磨き上げてきた音楽の最も美しい現在形である。聴き終えたとき、三人の"現在"と作曲家の"永遠"が、静かに同じ部屋で呼吸しているのを感じとることができるだろう。
CD後半に収録されている誰もが知っているシューベルトのリートの名品4曲のピアノ三重奏版も、シューベルトの微笑み、喜び、哀しみ、祈りなどが多彩な表情を持って語りかけてくる。なお、使用ピアノはウィーンが生んだ名器「ベーゼンドルファー Model 275」-その気品あるまろやかな響きと絹のように繊細なタッチは、1800年代初頭ウィーンの品格を湛えたシューベルトにまことにふさわしい楽器といえるであろう。 下田幸二(ライナーノーツより)
椿三重奏団について
~凛としたピアノ・トリオの誕生とその充実のとき~
2008年に初共演し、2019年に『椿三重奏団』と命名されたピアノ・トリオの活動は、近年ますます充実の度を深めている。ピアニスト高橋多佳子、ヴァイオリニスト礒絵里子、チェリスト新倉瞳といういずれも桐朋学園大学出身の才媛によるアンサンブルは、どこへ行っても喝采を浴び続けている。
筆者は『椿三重奏団』の活動を最初からつぶさに聴くという幸運に恵まれてきた。その道程をふり返ってしみじみと感じることがある。それは、三人がお互いの人間性を深く愛しながらも、プロフェッショナルな音楽家としての誇りを高く保ち、個性を隠すことなく披露しつつ、妥協せずにアンサンブルを見事に醸成してゆくというポテンシャルの高さである。さまざまな作品での最初の合わせから、数度のステージを経て、作品が芳醇な香りを放っていく三人のさまを聴いていると、それはまるで素晴らしいワインのようだ。彼女たちが醸し出す演奏には、幾年もの熟成に耐えうる確固たる「音楽の核」が存在している。
そんな『椿三重奏団』の充実を象徴する出来事の一つに、「音楽の友」誌による「あなたが選ぶクラシック・ベストテン2024」(2024年9月号)がある。その室内楽部門で、『椿三重奏団』は、「第5位」にランキングされたのである。これは『イ・ムジチ合奏団』(第4位)と『ベルリン・フィル八重奏団』(第6位)に挟まれてのランク・インで、椿三重奏団の演奏の質が高く評価されてのことであった。
広がるレパートリー~シューベルトへ!
『椿三重奏団』は、2020年、メンデルスゾーン&ブラームスの《ピアノ三重奏曲第1番》という王道の二大ピアノ三重奏曲でデビュー・ディスクをリリースし、2023年には、チャイコフスキー《偉大な芸術家の想い出に》とショスタコーヴィチ《ピアノ三重奏曲第2番》という濃厚で熱いロシア音楽によるセカンド・ディスクで、確固たる地位を築いた。
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発売・販売元 提供資料(2026/03/11)
とりわけ近年の椿三重奏団を特徴づけるのは、音の密度を上げるだけではなく、音と音の「行間」を美しく生み出していることだろう。ピアノは和声と対位法の色彩を精緻に配し、ヴァイオリンは言葉の子音のようにフレーズの輪郭を立たせ、チェロは胸郭の呼吸のような低声の深みで全体を温める。その上で彼女たちのアンサンブルは、各々の音楽の息遣いの確かさと同時に、互いの音を聴きながら「瞬時に」役割を入れ替える柔軟さ――前に出る者、支える者、まとめる者がフレーズごとに巧みに交替していく身のこなし――を獲得してきたのである。
『椿三重奏団』が、第3弾のディスクに選んだ作曲家は、シューベルトである。彼女たちがシューベルトの室内楽作品の傑作である《ピアノ三重奏曲第2番変ホ長調 作品100 D.929》をレパートリーに加えたのは2025年1月で、最初に強くこの作品を希望したのはチェロの新倉瞳であったという。「ソリスト性の高い私たちが年月を重ね、お互いにアンサンブルの深みを獲得してきた今こそシューベルトを」との想いであった。ちょうど高橋多佳子は2024年にオール・シューベルトのリサイタルを開いてシューベルトを近しく感じていたし、礒絵里子も《弦楽五重奏曲ハ長調》や《ピアノ五重奏曲「ます」》などのシューベルトのステージを計画しており、三人はすぐさま意気投合した。実際、「最初の合わせから三人の考える音楽はスムーズに同じベクトルへと結晶化していった」と高橋は言う。そして、何度かのステージを経て礒が感じた「シューベルトの良さにたくさん気づけたこの作品に心から感謝している」という言葉に三人の想いは集約されよう。こうして、本ディスクが日の目を見たのである。
なお、使用ピアノはウィーンが生んだ名器「ベーゼンドルファー Model 275」―その気品あるまろやかな響きと絹のように繊細なタッチは、1800年代初頭ウィーンの品格を湛えたシューベルトにまことにふさわしい楽器である。 解説:下田幸二
<高橋多佳子(ピアノ)>
桐朋学園大学卒業、国立ワルシャワ・ショパン音楽院研究科修了。第12回ショパン国際ピアノ・コンクール第5位、第6回ポルト市国際音楽コンクール第2位、第3回ラジヴィーウ国際ピアノ・コンクール第1位、第22回日本ショパン協会賞などを受賞。リサイタルやオーケストラ共演など活発な演奏活動を続ける。既に26タイトルのCDをリリースし、多くが"レコード芸術誌特選盤"となる。2019年12月に『ショパン:ピアノ協奏曲第1番他』(オクタヴィアレコード)、2020年2月に『椿三重奏団/メンデルスゾーン&ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番』(アールアンフィニ)と続けてリリースされ大きな話題となった。2015年刊行の『ショパンの本』(音楽之友社)ではDVDでのピアノ演奏を担当した。宮谷理香とのピアノ・デュオ「デュオ・グレイス」、礒絵里子(Vn.)、新倉瞳(Vc.)との「椿三重奏団」としても活動。《生で聴く「のだめカンタービレ」の音楽会》中心メンバー。ヨーロッパの著名な国際音楽祭への出演や、ポーランドの《青少年のためのショパン国際ピアノ・コンクール》、ロシアの《ラフマニノフ国際ピアノ・コンクール》に審査員として招聘されるなど国際的なキャリアも築いている。
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<礒 絵里子(ヴァイオリン)>
桐朋学園大学卒業後、文化庁芸術家在外派遣研修員としてブリュッセル王立音楽院に留学し、修士課程大賞を受賞し首席修了。マリア・カナルス国際音楽コンクールほか国内外のコンクールで入賞。ソリストとしてオーケストラとの共演、全国各地でのリサイタルの他、宮崎国際音楽祭への参加、鎌倉芸術館ゾリステンメンバー、「デュオ・プリマ」「Ensemble Φ(ファイ)」「デュオ・パッシオーネ」「椿三重奏団」など室内楽でも多彩な演奏活動を展開。(一財)地域創造公共ホール音楽活性化支援事業登録アーティスト、並びにソニー音楽財団「こどものためのクラシック」登録アーティストとしてアウトリーチ活動にも積極的に参加している。2010年よりFM ヨコハマ「礒絵里子のSEASIDE CLASSIC」のパーソナリティを務める。デビュー以来12枚のCDをリリース。真摯な演奏への取り組み、確かな技量に基づいたヨーロッパ仕込みの洗練された感性には定評があり、「気負いのないしなやかな活動ぶりが、クラシック音楽シーンで着実に存在感を放っている」など各媒体で高く評されている。
<新倉 瞳(チェロ)>
桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業、皇居桃華楽堂新人演奏会に出演し御前演奏を行う。その後スイスへ渡り、バーゼル音楽院ソリストコース・教職課程の両修士課程を最高点で修了。これまでに毛利伯郎、堤剛、Thomas Demenga、Martin Zaller(バロック・チェロ)の各氏に師事。国内外での受賞歴も多数、近年では第18回ホテルオークラ音楽賞、第19回(2020年度)齋藤秀雄メモリアル基金賞チェロ部門受賞。桐朋学園大学在学中にはEMI Music JapanよりCDデビューを果たし、これまでにEMI Music Japanから3枚のアルバム、アールアンフィニ・レーベルより、最新CD『11月の夜想曲~新倉瞳委嘱作品集』(世界初演初録音)を含む5枚のアルバムが発売されている。現在はCamerata Zurich のソロ首席チェリストとしてスイスを拠点に活躍する中、ソリスト、室内楽奏者として全国各地でリサイタル、オーケストラとの共演を重ね、司会、番組ナレーション、音楽劇、演奏家のためのドレスM Maglie le cassettoのプロデュース等、活動の幅を広げ音楽の素晴らしさを広く深く伝えようとする姿勢は多くの共感を集めている。使用楽器は、宗次コレクションより貸与されたMatteo Goffriller (1710年製)。
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