マレウレウ1st Album『もっといて、ひっそりね。』が、新たなミックス、マスタリングにより蘇る。
アイヌの伝統歌を今に伝える名盤が、ジャケットも一新して初レコード化。
4つの声がアイヌの昔と今、未来をつなぐ。時空を越えて響くマレウレウ(蝶)の歌声。
アイヌの伝統歌「ウポポ」を現代に歌い継ぐ女性ヴォーカル・グループ、マレウレウ。アイヌは、楽譜を残さず、主に口伝で受け継ぐため、彼女たちが歌う歌は、かつて年長者から伝え聞いた歌や、資料館で自ら掘り起こし、探し当てた古い保存音源が基盤となっている。そうした先人たちのウポポに憧憬を抱きながらも、ただ真似するのではなく、「今の自分たちにしか歌えない歌」=現在進行形のウポポを追求していく。そして、それを積み重ねることで、やがて先人たちの歌に自然と近づいていくことがマレウレウのテーマだ。プロデューサーのOKIも「アイヌ文化で重要なのは"個々のスタイル"。伝統を引用しつつ、マレウレウのスタイルを入れることで伝統が様変わりして活性化していくことが大切」と語る。「みんなで一緒に歌った方が楽しい」とライブでウコウク(輪唱)を観客と合唱してみたり、「私たちのルーツ・ミュージックはこんなに素敵なのよ!」と天真爛漫にシェアしてくれる彼女たちの姿勢もまた、伝統の門戸を開く大きな魅力となっている。
このたびレコード化される2012年発表のアルバム『もっといて、ひっそりね。』は、そんなマレウレウの初期衝動が詰まったフレッシュな作品だ。メンバーのRekpoは、14年前に録音した本作の自らの歌を「同じ曲でも今と節回しが全然違う」と振り返る。アイヌのウポポは自分流の節回しが大事。昔の歌、今の歌、将来の歌。その瞬間の歌を録音物で残し続け、変化を楽しむことに意義があると言う。本作は、2020年にRim Rimが脱退する以前の録音という意味でも、この時にしか生まれ得なかった4人の声のグルーヴを堪能できる貴重な作品だ。
何百年先まで歴史に残る作品にしたい。その思いから、本盤ではOKIが新たに8曲をミックス、リマスタリングを手がけている。CD盤と聞き比べてみると、重層感、臨場感が増し、とりわけ螺旋状に追い掛け合うウコウクのパートなどは、立体感のある声の渦が恐ろしいまでに迫ってくる。CD盤発表当時から何度も聞き込んだつもりでいたが、こうして改めて聞くと、独創的なリズム、パズルのような歌の旋律構成など、もともとのアイヌの伝統歌が持つ豊かな音楽性に驚かされる。エッジーなベースのフレーズと流麗なトンコリが効いた「KAPIW UPOPO」、打ち込みのビートとキャッチーなメロディーで高揚していくダンス・チューン「KANE REN REN」など、「よけいなことをやり散らかすのが自分の役割」と言うOKIの遊び心が冴え渡るアレンジにも感服。14年の時を経ても色褪せない、むしろ輝きが増したこの音楽を讃えたい。
先人の歌と共鳴し、自身のスタイルで未来を切り拓くマレウレウの伝統の形。アナログ独自の奥行きのある音が、その真髄を浮き彫りにし、さらなる深遠なウポポの世界を見せてくれるはずだ。
文/岡部徳枝
発売・販売元 提供資料(2026/02/12)
UAやSPECIAL OTHERSとの共演も話題となった、アイヌの伝統歌(ウポポ)をいまに伝える女子4人組の初フル・アルバム。大半はアカペラだが、単語の繰り返しが生み出すミニマルなリズムと呪術的なメロディーの醸すトランシーさに驚かされる。プロデュースも担当したOKI(OK I DUBAINU BAND)によるトンコリと打ち込み風のビートが、作品にモダンさをプラスしている点が特徴的だ。
bounce (C)岡本大輔
タワーレコード(vol.347(2012年8月25日発行号)掲載)
アイヌの伝統歌唱を受け継ぐチャーミングな女性4人組、マレウレウの待望の初フルアルバムである。UAやS P E C I A LOTHERS、サカキマンゴー、オオルタイチらとの共演を経て、更にパワーアップした輪唱とトンコリ奏者OKIによるサウンドプロダクションが一体となって迫り来るさまは圧巻。沖縄、更にはアフリカの音楽にまで通じるような広がりと普遍性も大きな魅力だ。ヤン富田のスティールパン諸作に通じる魅力もあり。
intoxicate (C)編集部
タワーレコード(vol.99(2012年8月20日発行号)掲載)