容赦ない内省 深い誠実さ スピリチュアリティ
ブラックでありトランスという自身の境遇をもとに怒りと解放を伴う前作『The King』から受容へと向かう本作『You're Free to Go』へ
勇気と余白を与え、のびやかに我々にも問いかける
ノースカロライナを拠点に活動するシンガー・ソングライター Anjimileは、ノースイースタン大学在学中、ボストンの活気あるインディ・シーンから頭角を現し、真摯なソングライティングと繊細なサウンド・テクスチャー、そして祈りと祝祭のようなライブ・パフォーマンスで注目を集めた。
Anjimileは容赦ない内省と深い誠実さを特徴とする、独自の音楽性を切り拓いてきた。
本作は、前作『The King』の延長線上にありながらも、より大きく受容の器を携えた内容となっている。変化に満ちた年月をかけて制作された本作は、別れから新しい愛へ、深い悲しみと喪失から再生と再発見へと、変容がもたらす複雑さを鮮やかに描き出す。この2年間は、人生において大きな転換期だったと語るAnjimileは、本作において、再び人生を信じることを学んでいく。
〈4AD〉からのデビュー作となり、サム・ゲンデルやビッグシーフのドラマーであるジェームス・クリブチェニアらとコラボした前作『The King』の緻密さや複雑さとは対照的に、本作『You're Free to Go』は、プロデューサーBrad Cook(Waxahatchee、Hurray for the Riff Raff、Mavis Staples)の直感的なディレクションのもと、温かみのあるアコースティック・ギター、さりげないシンセの質感、豊かなストリングス・アレンジ、繊細なリズム・レイヤーに支えられ、楽曲はのびやかに、より自然体で有機的に展開していく。Nathan Stocker(Hippo Campus)、Matt McCaughan(Bon Iver)との共演に加え、Anjimileにとって長年のヒーローであり、大きな影響を与えていたSam Beam(Iron & Wine)がゲスト・ヴォーカルとして「Destroying You」(#11)で参加。探究的でありながらも親密な空気感が、Anjimileの繊細な物語性と完璧に呼応している。「Turning Away」(#5)や「The Store」(#7)には初期Modest Mouseを想起させるような、生々しく飾らないオーセンティシティが漂い、メロディ面では90年代後半のオルタナティヴ・ポップへのほのかなノスタルジーを感じさせつつ、フォークの感性を自然に溶け込ませた親しみやすいフックを生み出している。
本作『You're Free to Go』の豊かなテクスチャーを持つ全12曲は、人生の揺らぎを正直に映し出し、矛盾を受け入れながら、優しさのなかに解放を見出していく。Anjimileの言葉を借りれば、このアルバムは「問いの中で呼吸する」ことそのもの。人生の最も深い瞬間は、明確な答えではなく、不確かさと発見のあいだに生まれるのだと静かに示している。すべての音符の中で、Anjimileは聴き手それぞれが自身の真実を見つける余白を差し出し、自由とは痛みの不在ではなく、愛する勇気、問い続ける勇気、そして何度でも始める勇気なのだと、そっと思い出させてくれる。
発売・販売元 提供資料(2026/01/14)