ベルギー生まれ、ポルトガル系という多層的な文化背景を持ち、80年代初頭からフランス語ポップの前線を更新してきたLIOは、アイドル的な成功と同時に、作家性と実験性を併せ持つ稀有な存在として評価されてきたアーティスト。セルジュ・ゲンスブール以降のフレンチ・ポップ文脈において、軽やかさと毒気、親しみやすさと批評性を同時に成立させてきた立ち位置は、現在に至るまで特異なものと言えます。
キャリア初期にはZE RECORDS周辺のムーブメントとも接続し、ニューウェイヴ以降の感覚やエレクトロニックなポップ感覚をいち早く取り込みながら、単なる時代の顔に留まらない表現領域を切り開いてきました。その後も一貫して、作家との関係性を重視し、フランス語テキストの二重性やポップソングの形式そのものを問い直す活動を継続してきた点は、同世代のポップ・シンガーと一線を画す重要な要素です。
本作は、そうした長い歩みを踏まえたうえで、LIO自身の原点とも言えるポップ・ミュージックへと意識的に立ち返った作品。エレクトロニックなビート感覚、明快なメロディ、そして一聴して親しみやすい構造の裏側に、彼女が長年培ってきた言語感覚と距離感の妙が息づいています。過度なノスタルジーに寄ることなく、現在の感性でポップスを再定義しようとする姿勢が全編に貫かれています。また本作には、LOUANE、HOSHI、CORINE、SOPHIE ELLIS-BEXTORなど、新世代から国際的ポップ・アクトまで多彩な書き手が参加。軽快でハイパーアクティヴな電子ポップを基調にしながら、二重の意味を孕んだリリックが随所に散りばめられています。
パーティチューンからエモーショナルなバラードまでバランスよく収録され、軽快なリズムに乗せた語り口、感情を押し付けすぎないヴォーカル運び、そしてフランス語特有の響きを生かしたフレージングが際立ち、キャリアを重ねたからこそ成立する自然体の表現が印象を残す一枚。ZE RECORDS期から続くエレクトロニック・ポップへの感覚的な親和性と、成熟した視点からのポップ再構築が、現在のLIOの音像として明確に結実した内容です。
発売・販売元 提供資料(2026/01/13)