孤高の天才=プリンス カタログ再発プロジェクト<LOVE 4EVER>最新シリーズ
2015年リリース 38枚目のスタジオ・アルバム『HITnRUN phase one』
2016年4月21日に惜しまれながらも57歳の若さで急逝、全世界のアーティストや音楽ファンに今なお多大な影響を与え続けている孤高の天才=プリンス。本作は、カタログ再発プロジェクト<LOVE 4EVER>最新シリーズ となる、彼が10年前の2015年9月に発表した自身38枚目のアルバム『HITnRUN phase one』(ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン)。
2015年2月開催の第57回グラミー授賞式で、「アルバムは今でも重要だ、書物や黒人の命と同じように」(原文"Albums still matter. Like books and black lives, albums still matter")とスピーチでアルバムの大切さを説いたプリンス。同年 9月に発表した自身38枚目のアルバム『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』は、当時25歳のジョシュア・ウェルトンをプロデュースのみならずコンポーザーとしても全曲共作に抜擢した作品で、次世代育成も軽やかに担う熟練天才ミュージシャンによる未来への野心をも感じる実験的アルバム。制作期間は2013年から2015年の約2年間にわたり、当時プリンス本人はアルバムについて「とても実験的で、ちょっと変わってて、とてもファンキーなもの」と語っていた。
プリンスは全ての楽器をこなすマルチ・プレイヤーであり、セルフ・プロデュースもする非凡な才能、イメージ戦略を打ち出すような野心、そして当時としては画期的なツアーのチケット購入者特典としてアルバムを無料配布するという手法を企画・実現し、その後の音楽プロモーションのやり方を180度変えた改革者でもあった。今でもその唯一無二の存在は多くのアーティストや音楽ファンに影響を与え続けている。
プリンスは2015年に「"HITnRUN"はまるで今日のことのように聞こえる」("HITnRUN sounds like today.")と語っていたが、リリースから10年経った今も、その言葉通りアルバムもメッセージも全く風化することなく、さらに時空を超え、未来へと受け継がれていく。
発売・販売元 提供資料(2025/12/19)
ワーナーに電撃復帰したと思いきや、あっさりインディーに戻って早くも新作が登場。先行発表した社会派ソング"Baltimore"は収録せず、自身の過去曲のフレーズも多く引用し、タイトルは〈やり逃げ〉……と書くと敬遠されそうだが、臆面なくポップ&ファンキーな振る舞いを聴けばそんな小事は吹っ飛ぶ。新味を貪欲に採り入れながら殿下の宝刀を抜きまくった前作『Art Official Age』を踏襲しつつ、未発表アイデアと新たな実験をゴチャッと詰め込んだ殿下の放蕩と言えるやりたい放題ぶりが痛快で、キャッチー度を増した"This Could B Us"とメロウ化した"Fallinlove2nite"の2曲のセルフ・リメイク然り、前作に収めきれず溢れ出た創造物のシャワーを浴びているかのよう。第2フェーズもお待ちしております。
bounce (C)池谷昌之
タワーレコード(vol.384(2015年10月25日発行号)掲載)
直情的で、攻撃的、独白的と言えばいいのか、以前からネットで流れていた「FALLINLOVE2NITE」も、このアルバムの中に配置されることで、よりその良さを感じることができる。