BLAKE BABIESやTHE LEMONHEADS、JULIANA HATFIELD THREEで90年代オルタナ/インディ・ロックを彩ってきたマサチューセッツのシンガー・ソングライターJULIANA HATFIELD。ボストン近郊のシーンから登場し、ソロ名義でもATLANTICやBAR NONEなどから多くの作品を発表してきたベテランです。インディ・ギター・ポップと内省的なソングライティングを結びつけてきたキャリアの延長線上で、本作『LIGHTNING MIGHT STRIKE』は西マサチューセッツの新しい生活と深い喪失体験を背景に生まれました。
長年暮らした都市部のアパートから車で2時間ほど離れたローカル・タウンへ移り、一人暮らしを始めた直後に、親友の死をテーマにした"ASHES"、愛犬との別れを歌う"CONSTANT COMPANION"、母親の食道がんの診断をめぐる"SCRATCHERS"といった出来事が重なります。JULIANA HATFIELD自身は1年近く深い抑うつ状態にあり、その孤独と不安が"LONG SLOW NERVOUS BREAKDOWN"や"HARMONIZING WITH MYSELF"、"WHERE ARE YOU NOW"の歌詞に反映されています。自身の家族史には、母親の弟が16歳で落雷事故に遭った出来事もあり、アルバム・タイトルには避けられない運命やコントロール不能な力への問いかけが込められています。
乾いたギターとタイトなドラムが走る"FALL APART"、徐々に重くなるコード進行で精神の崩れを描く"LONG SLOW NERVOUS BREAKDOWN"、ポップなフックと無力感を同居させる"POPSICLE"、自宅スタジオで多重録音された"MY HOUSE IS NOT MY DREAM HOUSE"、多声コーラスで孤独を逆照射する"HARMONIZING WITH MYSELF"などなど、CHRIS ANZALONEのドラムとED VALAUSKASのベースが支えるバンド・サウンドの中で、JULIANA HATFIELDのギターとヴォーカルが希望と諦めのあいだを揺れ動く感覚を伝えます。
運命やトラウマを扱いながらも、JULIANA HATFIELDらしいフックの強いギター・ポップとして成立していることが本盤の魅力。マサチューセッツの自宅で録音されたギターとキーボードが、ボストン周辺のミュージシャンたちの演奏と混ざり合い、THE BREEDERSやLIZ PHAIR、VERUCA SALTあたりの90年代USオルタナ・ファンにも届く温度感の作品になっています。
発売・販売元 提供資料(2025/12/11)