稀有な音響の錬金術が働いているようなノルウェー人ドラマー、トーマス・ストロネン率いるアンサンブル、Time Is A Blind Guideの3作目が登場。
チェロには、ルーシー・レイルトンに代わってレオ・スヴェンソン・サンダーが加入し、新たな音色が、静かに息づくアンサンブルの音にシームレスに溶け込む。田中鮎美の控えめながらも極めて精密な演奏が、ストレーネンの打楽器的なレイヤー、オーレ・モーテン・ヴァーガンの歪んだコントラバス、ホーコン・アーセの叙情的なヴァイオリンに共鳴しながら、共感をもって鍵盤を駆ける。時に3つの弦楽器が確固たるトリオを形成し、ピアノやパーカッションと思索的な対話を交わす場面もあるが、大半は各楽器がダイナミックに音像の中へ滑り込み、また消えていく。その脈動は全体として機能し、レインボウ・スタジオの定評ある音響空間に捉えられている。2021年にオスロのレインボー・スタジオで録音され、2024年にミュンヘンでミキシングされた本作は、マンフレッド・アイヒャーがプロデュースを担当。
<パーソネル>Thomas Stronen: drums; Ayumi Tanaka: piano; Hakon Aase: violin; Leo Svensson Sander: violoncello; Ole Morten Vagan: double bass
発売・販売元 提供資料(2025/11/06)
トーマス・ストローネンの新譜のタイトル "Off Stillness"は、日本語ではどのように翻訳されるのがいいのだろう。Silenceは音の不在、Stillnessは空間全体の動きのなさ、静けさを意味する。「静寂から」が妥当な訳なのだろう。アルバムを聴けば、静寂とせめぎ合うようにアンサンブルが音を点てる。すべての楽曲をトーマス自身が書き下ろし、アンサンブル名のTime is a blind guideが示すサウンドコンセプトが展開してゆく。耳で感得されて実演に至るストローネンの楽曲は、メンバーたちが静寂の中から手探りで手繰り寄せた響きを結晶する。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.180(2026年2月20日発行号)掲載)