| フォーマット | 書籍 |
| 発売日 | 2013年09月25日 |
| 国内/輸入 | 国内 |
| 出版社 | 南江堂 |
| 構成数 | 1 |
| パッケージ仕様 | - |
| SKU | 9784524266548 |
| ページ数 | 96 |
| 判型 | A5 |
構成数 : 1枚
【書評1】
コンパクトだが、必要なことはすべて書いてある。初心者にも読みやすいが、ある程度の知識がある人であれば深く考えさせられる。そんな一冊である。
著者の能登 洋氏は、一連のわかりやすいEBM解説書で定評があるだけでなく、糖尿病とがんのリスク、低炭水化物ダイエットと死亡率の関連など、重要な研究成果をたて続けに発表している臨床統計学の第一人者でもある。
本書は雑誌『医薬の門』に連載されていた「エビデンス探訪」シリーズをもとに単行本化されたものである。著者は1日1章ずつ読み進めて、消化不良予防のため、途中で1日、休読日を入れ、2週間かけて読むことを勧めている。1日あたりの分量はそれほど多くなく、だいたい10~15分あれば読める。しかし、内容が濃いので、一気に読もうとすると、かなり頭が疲れる。そこで、このような配慮がなされているのだろう。
なかでも冒頭の1日目「Evidence-Based Medicine(EBM)とは-エビデンスの正しい使いこなし方」、2日目「Evidence-Based Medicine(EBM)の実地応用」の2章は、EBMの本質に迫る部分で、本書のなかでもとくに重要な印象を受ける。すなわち、繰り返し「EBMは、患者に始まり患者に帰着します」と書かれているように、EBMは患者本位の個別化医療を実現するためのものである、という視点である。
科学は客観的で再現性があることを前提とするため、臨床統計学には一般化のため個別性を消去していく側面がある。たとえば、ある治療法それ自体の有効性を検討するため、X%の患者さんでは有効で、Y%の患者さんでは無効であったとしたとき、その結果は数字として取り扱われ、統計的に処理される。その際、年齢、性別、リスクファクターなど、計測可能な要素は数学的に調整されるが、個別の患者さんの人生観など計測困難な要素を解析結果に反映することは、きわめて困難である。
このような問題を解決するため、著者は1日目の末尾で、EBMの発展のためNarrative-Based Medicine(NBM)、いわゆる「ものがたり医療」の重要性についても言及している。「EBMは人間性重視の医療ですが、個別化の点(「EBMの手順」のSTEP 4)ではどうしても限界があります。近年脚光を浴び始めているNBMは、まさにその不足を補填するもので、EBMとバランスをとると、いっそうよい診療の提供につながります」との一節を読んで、「なるほど」と思う読者は多いのではなかろうか。
医療の現場における意思決定において、患者さんの自己決定権は非常に重要である。しかし医療の領域では、一般の人と医療従事者で専門知識に大きな隔たりがある。そこで、患者さんが自らの人生観に基づき、悔いがなく満足のいくような自己決定ができるよう、エビデンスをコミュニケーションの道具として使いこなすことが重要になる。「わかりにくいことを、わかりやすく伝える」というのは、著者のモットーと思われるが、誰もが心がけなくてはならないことである。EBMには興味があるけれども敷居が高く感じる人、EBMのことは少し知っているけれどもどこかしっくりこないところがある人、いずれにもお勧めの一冊である。
臨床雑誌内科113巻6号(2014年6月増大号)より転載
評者●独立行政法人国立病院機構 京都医療センター糖尿病センター 村田敬
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EBMとその実践に必要な臨床統計学を"非数学的"にやさしく解説した入門書。重要な内容は具体例を通して繰り返し解説し、統計学に苦手意識をもっている方にもお薦め。1日1章ずつ読み進めることで、EBMを実践する知識が2週間で身につく。好評書『やさしいエビデンスの読み方・使い方』と合わせて使うとさらに効果的。
【序文】
本書は、EBM(Evidence-Based Medicine)とその実践に必要な臨床統計学を入門者向けにやさしく解説した「エビデンス探訪」シリーズ(『医薬の門』誌、2011~2013年連載)を編纂し、書籍化したものです。EBMを正しく理解し実践するには、統計学を活用することが要となりますが、現状では統計学の習得は容易ではありません。そのため、生きた統計学知識を体得するために非数学的解説をしたり、特に重要な点は具体例で繰り返し解説したりしている点が本書の特長です。1日1章ずつ通読すれば、消化不良予防のための1週間に1日の「休読」日を含み、2週間でマスターできる構成です。もちろん辞書としても活用できます。
書籍化に際し、前著『やさしいエビデンスの読み方・使い方-臨床統計学からEBMの真実を読む』(南江堂)へのリンク※を追記し発展学習に役立つようにしましたので、こちらもぜひご参照下さい。
2013年7月
能登洋

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