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| フォーマット | 書籍 |
| 発売日 | 2021年03月26日 |
| 国内/輸入 | 国内 |
| 出版社 | 南江堂 |
| 構成数 | 1 |
| パッケージ仕様 | - |
| SKU | 9784524227662 |
| ページ数 | 240 |
| 判型 | B5 |
構成数 : 1枚
【書評】
超高齢社会が大きな社会的テーマとなっている現在の日本では,とりわけ高齢世代で人工関節手術の適応となる関節疾患患者が増加している.関節運動機能を回復するうえで人工関節手術は優れた機能再建方法だが,その合併症は多岐にわたり,対応に難渋することも少なくない.本書は,そのような現状に向き合った秀逸な1冊である.総論と各論を設けて,人工関節手術の合併症を整理しながらピンポイントにテーマを絞り,合併症の疫学や病態,その対応方法をていねいに網羅した点が読者にとってありがたい.
総論では,静脈血栓塞栓症,術後感染,疼痛,出血,金属アレルギーを取り上げている.人工関節周囲感染はとりわけボリューム満点で,疫学,感染経路に始まり,口腔ケア,鼻腔の除菌,高リスク症例に対する周術期管理のポイント,また,術前清拭,消毒方法のタイミングも取り上げている.さらに手術室の環境,術中感染対策,抗菌人工関節の有用性にも触れている.創傷管理を中心とした術後感染予防管理,感染の診断,発症対応時のプロトコールも取り上げていて,奥が深い.周術期に欠かせない出血管理や患者の生活の質(QOL)に直結する疼痛管理の問題も的確に掘り下げ対応方法を明示している.加えて,金属アレルギーのメカニズムやadverse reactions to metal debris(ARMD)の病態,疫学は今後の人工関節の生体親和性の向上を考え発展させていくうえで欠かすことのできない内容である.
各論では,人工股関節全置換術(THA),人工膝関節全置換術(TKA),人工足関節全置換術(TAA),人工肩関節全置換術(TSA),人工肘関節全置換術(TEA)の順に項目が設けられ,THAでは,術中骨折や神経血管損傷を中心とした術中合併症,また下肢の脚長差,可動域制限への対応や脱臼,摩耗,弛み,破損の問題が取り上げられ,その対応方法が詳しく述べられている.同様に,TKAでも術中骨折や神経血管損傷を中心とした術中合併症,可動域制限の問題に焦点が当てられ,さらに膝蓋骨脱臼を含む脱臼,摩耗,弛み,破損について詳述されている.TAA,TSA,TEAでも同様な内容構成で,THAやTKAと同じように術中合併症の概要,危険因子,防止のための対策や工夫が明示され,可動域制限や脱臼に対しては,手術手技,患者教育,リハビリテーションなど予防のための対策・工夫が細かく述べられている.摩耗,弛み,破損についても症例の実際が示され,危険因子,防止のための対策・工夫が詳しく紹介されている.
なによりも本書の優れた特徴は,現在,本邦で活躍する整形外科医のなかで,とりわけ人工関節手術に長けた気鋭が執筆を担当していることである.それぞれの分野は内容が洗練されエッセンス満載で,読み応え十分な内容となっている.編集者山本謙吾先生の企画が光彩を放つ本書は座右におきたいおすすめの1冊である.
臨床雑誌整形外科72巻12号(2021年11月号)より転載
評者●山形大学整形外科教授 高木理彰
【序文】
超高齢社会を迎えた日本では、人工関節置換術の対象となる各種の関節疾患患者が増加しています。人工関節置換術後には早期に除痛、そして一定の関節可動域の改善が得られ、患者のQOLの向上に寄与することが大きいため年間十数万件を超すきわめて多数の人工関節手術が行われ、その数は年々増加の一途をたどっています。診断学、材料学の発展や手術手技、さらには手...
年々増加する四肢関節の人工関節手術において,安全かつクオリティの高い治療結果を得るには,合併症対策の確かな知識と戦略が極めて重要である.本書では,VTE(静脈血栓塞栓症)や人工関節周囲感染,疼痛・出血管理から,各関節手術の術中合併症,可動域制限,脱臼,弛み・破損の対策まで,専門家が独自の工夫やピットフォールをまじえて解説している.文献などでは学べない合併症対策の「英知」が結集した一冊.

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