ハードコアを内包しシーンに出現、常に最新型のインディー・ロックを鳴らし続けるシアトルの5ピース・エモ・マス・ロック・バンドMINUS THE BEAR。ポスト・ハードコア以降のテクニカルなギターとポップなソングライティングを両立させた2007年の3RDアルバム。前作までで見せたギターのポリリズムとエレクトロニカの導入を土台にしつつ、プログレッシヴ・ロックや70年代AOR、スペース・ロックまで取り込んだスケール感を打ち出した一枚として評価されています。
録音はワシントン州ショアラインのROBERT LANG STUDIOやシアトルのRED ROOM STUDIOで行われ、プロデュースにはバンドの旧メンバーでもあるMATT BAYLESが参加しました。ALEX ROSEが正式なキーボーディストとして加入した初めての作品でもあり、ギターとシンセが作るハーモニーのレイヤーが一段と厚くなっています。
エモーショナルなギター・リフと変拍子気味のビートが一気に押し寄せる"BURYING LUCK"、シンセのフレーズとギターのアルペジオが浮遊感を作る"ICE MONSTER"、サンプル的なループと鋭いギター・ラインが交錯する"KNIGHTS"、STEELY DANにも通じる洗練されたコード感とリズム隊のグルーヴが際立つ"WHITE MYSTERY"、GENESISやKING CRIMSON以降のプログレ感覚をモダンなインディ・ロックとして引き寄せた"L'LING"、空間系エフェクトを纏ったギターがポスト・ロック的な広がりを作る"WHEN WE ESCAPE"、PINK FLOYDの"ECHOES"を思わせる長尺の展開を自分たちなりのポップ感覚で引き寄せた"LOTUS"など、密度の高い楽曲が続きます。
ポスト・ロックやマス・ロックの技巧と、シアトルのインディ・ロックらしいメロディ志向を両立させたサウンドは、00年代後半のギター・ロックを振り返るうえで外せない内容。初期作品からのファンにはもちろん、近年のプログレ~ポスト・ロック再評価の流れでMINUS THE BEARを聴き直したいリスナーにも格好のタイミングとなるリイシューです。
BERNIE GRUNDMANによるヴァイナル・リマスターが施されたカラー・ヴァイナル仕様限定盤。
発売・販売元 提供資料(2025/12/11)
As evidenced on Planet of Ice, Minus the Bear's corner of the indie rock universe is much like that of Death Cab for Cutie's: smoothly melodic and tinged with all kinds of forward-thinking ephemera. "Knights" is dotted with electronic traces but driven primarily by spiky prog guitar leads and a driving pop hook. Nevertheless, there's also a grandiose side to Minus the Bear that strives for the arena and some kind of Incubus-like world of proggy, expansive guitar enchantment; it's indicated by the wheeling psychedelic accents on "Throwin' Shapes" and the slicing riffs of "Buryin' Luck." "Ice Monster" and "When We Escape" find the band hunkered down into spacy love grooves, while the icy plinks of "Lotus" locate even dreamier musical spaces. This is an album full of interesting harmonics, polished melodies, and singular arrangements, and overall a strong, hypnotic effort from the Seattle band. ~ Erik Hage
Rovi
シアトルのハードコア・シーンが生んだ最重要音楽集団、マイナス・ザ・ベアーの3作目が到着した。リミックス盤『Interpretaciones Del Oso』にバトルスのタイヨンダイ・ブラクストンやアンチコンのエイリアス、プランBらが参加していたこともあって多方面から注目を集める彼ら。いまや当代随一のプロデューサーとなったマット・ベイルズは正式メンバーでなくなったものの、今作でもその手腕を発揮し、エレクトロニクスとフィジカルな躍動感とを有機的に結合させたサウンドメイクを施している。〈ハードコアを通過し、ニューウェイヴを咀嚼したポスト・エモ〉などと強引にカテゴライズすることも可能だが、単なる足し算や掛け算だけではここまでのものは生まれないだろう。傑作だ。
bounce (C)粟野 竜二
タワーレコード(2007年09月号掲載 (P71))