耳と眼で、時間と空間を造形し 心の宇宙を表現する 宇野文夫の4つのピアノ作品
宇野文夫は、1980年代から40年に渡り、室内楽やピアノなどの作品を創作、発表し続けてきた。作風は時代によって変化しているが、現在その音楽は、無調音楽でありながらときに中心音や調を感じさせ、フレーズや形式に関しては無定形のようでいて明瞭なまとまりや反復も聴かれるもので、絵画に譬えれば抽象と具象の間に位置するような音楽となっている。例えば、ソナタ第3番「曙光」では、気まぐれに現れる多彩なフレーズや楽想と、繰り返し現れる一様な下降音形とが、交互に出現して全体を構成している。
こうした彼の音楽は、20世紀後半以降の新しい音楽の傾向、シュトックハウゼン、ブーレーズやケージ、ライリーらの作品を意識しつつ、現在のこの地に於ける自らの音楽を模索した結果としてのものである。最初期には、ミニマル・ミュージック、偶然性、システマティックな思考法などを意識して取り入れていたが、1990年代からは、自由で即興的に発想されたアイディアを基に発展させていく方法を採っている。
彼は、多岐に渡る音楽に影響を受けている。ピアノ音楽に関しては、上記に加えベートーヴェン、ショパン、シマノフスキ、シェーンベルク、アイヴズ、ソラブジ、武満といった作曲家を挙げている。ピアノ以外では、プログレッシヴ・ロック、フリー・ジャズ、そしてブルックナーの交響曲からも多大な影響を受けている。
今回、初の録音作品として、ピアニスト中村和枝により初演された独奏作品を、彼女の演奏により再録音し、まとめてリリースした。中村は、長く現代音楽の最先端で活躍してきたピアニストで、ブーレーズやシュトックハウゼン、ファーニホウらの作品の演奏を始め、多数の新作初演にも携わっている。既に数点のCDも発表しており、高い評価を得ている。
この録音は、宇野の職場である神戸学院大学のメモリアルホールを使用し、足掛け5年に渡って4回のセッションで行われた。
(1/2)
東武商事株式会社
発売・販売元 提供資料(2025/08/29)
<宇野 文夫>
1959年兵庫県西宮市生まれ。翌年より神戸にて育つ。武蔵野音楽大学音楽学部作曲専攻卒業、同大学院修了。1984年、「欅林の会」第4回作品展での「フルートとピアノのための二重奏曲」で初めて作品を公開。1985年自主企画「音楽の可能性コンサート・シリーズ」を開始、以来自作を含むこのシリーズ演奏会を6回開催。その中で、1987年、2019年には個展を行う。日本現代音楽協会、関西現代音楽交流協会、神戸音楽家協会、茨木新作音楽展に所属し、継続的に作品を発表している。
主要作品には、4つのピアノ・ソナタ、アルト・フルートのための音楽I・II、室内楽第1、第3~第11番がある。
作曲を、神戸にて中村茂隆、武蔵野音楽大学にて田辺恒弥に師事。
1998年より月刊「音楽現代」誌にて、作曲家、作品、演奏に関する評論を執筆。以後作曲と並行して様々な評論活動を行っている。
埼玉県での中学校教諭、武庫川女子大学、神戸学院大学、神戸大学、徳島大学の非常勤講師を歴任。現在、神戸学院大学人文学部教授。
<中村 和枝>
三重県出身。武蔵野音楽大学音楽学部器楽科卒業。JML入野喜朗音楽研究所にて研鑽を積む。第3回日本現代音楽ピアノコンクール優勝。第3回スペイン・シッチェス(Sitges)20世紀音楽コンクール優勝。リサイタルの他、多くの現代音楽演奏会に独奏者や室内楽奏者として出演し、海外の主要な現代音楽祭にても演奏・録音を行う。ソロCDとして『to you from』、『松平頼暁24のエッセーズ』(ともにALMレコード)を発表の他、多数の現代作品のCD録音に参加している。
(2/2)
東武商事株式会社
発売・販売元 提供資料(2025/08/29)