ヴィオラの女王、タベア・ツィンマーマン
アンサンブル・レゾナンツとの極めつけのアンサンブルで登場
エネスクとブリテン、それぞれヴァイオリン(エネスク)とヴィオラ(ブリテン)が特別な存在であったふたりの作曲家の作品を、ヴィオラの女王タベア・ツィンマーマンが、弦楽アンサンブルの世界最高峰、アンサンブル・レゾナンツを率いて演奏しました。アンサンブル・レゾナンツはハンブルクを拠点とする室内オーケストラで、弦楽アンサンブルとしての活動を主体としつつ、様々な編成の作品を演奏しています。常任指揮者をもちませんが、常任客演指揮者としてリッカルド・ミナージが就任しています。さらにジャン=ギアン・ケラス、イザベル・ファウスト、そしてタベア・ツィンマーマンら、世界最高峰の弦楽器奏者を客演指揮者として活動しています。
エネスクの弦楽八重奏曲は19歳の時の作品。自身名手でもあったヴァイオリン・パートを筆頭に、8つのパートすべてに広い音域とヴィルトゥオジティが要求される作品です。エネスクがブラームスの作品を深く研究し、ブラームスの前で演奏した経験もあること、メンデルスゾーンの八重奏曲についても精通していたことなどが窺われる作品です。エネスク自身は、この八重奏曲を弦楽オーケストラで演奏する可能性についても示唆しており、その際には旋律的なラインを指揮者の裁量でソリストに演奏させるよう提案しています。ここではアンサンブル・レゾナンツの弦楽オーケストラに、ツィンマーマンもヴィオラ・パートに加わりながらアンサンブルを率いて演奏しております。高い熱量の楽曲で、メロディの一つ一つにも情熱が満ちている作品ですが、ツィンマーマン率いるアンサンブルはエネルギーと抒情全開で、しかし1ミリも破綻することなく、圧巻の名演を展開しております。
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ブリテンの《ラクリメ》は1950年、ヴィオラ奏者のプリムローズのために書かれ、同年のオールドバラ音楽祭で作曲家自身の弾くピアノとともに初演されました。ここに収録されているのはブリテン最晩年の1976年に完成したヴィオラ独奏と弦楽アンサンブル版です。《ラクリメ》の元になっているのは、ジョン・ダウランド(1563-1626)の歌曲《If my complaints couldpassions move(もし私の嘆きが情熱を動かせるなら)》、そして《Flow my tears(涙よ流れよ)》(ラクリメと呼ばれることも)。
ブリテンはエリザベス朝の詩と音楽に強い関心を持っていましたが、この編曲には自らの死を意識していたのではないかと感じさせるような瞬間も多く見られます。作品終盤、葬送行進曲の上でヴィオラが熱に浮かされたようなソロを奏で、コントラバスがピツィカートでバスドラムのような響きを出す中、最後にはダウランドの哀歌がルネサンス風の和声とともに静かに響きます。まるで時間が止まり、この世を超越した場所にいるような錯覚をおぼえます。ツィンマーマンのソロがとにかく圧巻、そして弦楽アンサンブルも素晴らしいものがあります。
タベア・ツィンマーマンは1966年生まれ。3歳の時からヴィオラを演奏しているという、生まれついてのヴィオラ奏者。16歳でジュネーヴ国際音楽コンクールに優勝、21歳で教授に就任という、まさに破格の才能の持ち主です。音楽性、説得力、音量、迫力、技巧、何をとっても圧倒的の一語に尽きる、まさにヴィオラの女王と呼ぶにふさわしい存在です。
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