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| フォーマット | 書籍 |
| 発売日 | 2020年02月04日 |
| 国内/輸入 | 国内 |
| 出版社 | 南江堂 |
| 構成数 | 1 |
| パッケージ仕様 | - |
| SKU | 9784524246670 |
| ページ数 | 224 |
| 判型 | B5 |
構成数 : 1枚
【書評】
肺癌のプロファイルは時代とともに変化している.ここ30 年ほどで画像診断,特にCT の進歩や普及があり,胸部X 線では認識困難な小型肺癌やすりガラス所見を呈する高分化腺癌が多く発見 されるようになったことは,誰もが実感していることであろう.TNM 分類(第8 版)の小型肺癌を中心としたT 因子の細分化もその反映である.同時期にWHO 分類に腺癌の新たな組織分類が導入されたが,組織亜型で悪性度が評価できる概念が採用されたことは小型肺癌切除例の綿密な形態学的解析の賜物である.
一方で肺癌か非悪性の結節か,画像上で鑑別を要する機会も増加した.画像読影の習熟とともに,採取された細胞を検鏡する際に,肺癌と非悪性病変の双方の細胞像に精通することの重要性が増している.
肺癌の形態学を中心とした解説書は多いが,非悪性呼吸器疾患に特化したきわめて画期的な細胞診アトラスがここに上梓された.編者らの緒言によれば,2017 年5 月の第58 回日本臨床細胞学会春期大会のワークショップ「知って得する呼吸器疾患の細胞診と画像診断」を開催して好評であったことが印象深かったとのことである.このことが熱意の源となり,肺癌との鑑別を明確に支援する書として結実した.
早速,総論から拝読させていただいた.1 解剖,正常組織,細胞像,2 検体処理,3 免疫染色,遺伝子検査,4 疾患ごとの画像診断の基礎事項に分かれており,細胞像をみる前に「これだけは知っておきたい」知識が簡潔にまとめられている.肺癌診療においてゲノム医療に基づく個別化治療の時代に突入したことも大きな進歩であるが,それに対しても十分に応用可能な内容が網羅されている.
各論は非悪性呼吸器疾患を腫瘍性病変,感染性疾患,その他の非腫瘍性疾患に分類し,それらに属する代表的疾患の,1 定義・病因・病態,2 臨床事項,3 画像所見,4 病理組織所見,5 細胞診所見の項目別にていねいに記載されている.提示されている画像は典型的かつ鮮明であり,初学者からエキスパートまで包括的な理解が可能であろう.希少疾患に対しても質の高い内容が保たれており,レイアウトも含め,これほど洗練された書はほかにないと考える.
加えて,「細胞診のコツ」,「コラム」,「細胞診でここまでわかる」で必須の知識や臨床上の盲点などが追記されている.この数行の背後にはどれほどの経験や修行があったのだろうか,重みや含蓄を感じさせるコメントが多い.まさに貴重な知識を著者から直接伝授されるかのようである.
224頁の成書であるが,その数倍もの内容が濃縮されている.一気に読み進むことができるのは,編集の見事さ,美しい紙面,簡潔で理解しやすい記述など,相乗効果によるものであろう.ここには臨床と細胞学の融合した姿があり,知識の修得や日常の診断業務の際に必携の書となることを確信する.
呼吸器の非悪性疾患に焦点をおいた慧眼と著者らの熱意を心より賞賛したい.
胸部外科73巻7号(2020年7月号)より転載
評者●東京医科大学呼吸器・甲状腺外科主任教授 池田徳彦
【発刊にあたって】
この度、『非悪性呼吸器細胞診アトラス~肺癌との鑑別に悩んだときに~』が上梓されました。本書の作成にご協力いただいた執筆者に対し心から感謝申し上げます。
呼吸器領域におけ
肺癌との鑑別に悩んだ際に役立つ細胞診アトラスとして,上気道から気管支,肺における代表的な非悪性病変に焦点を当て,細胞像に画像診断を含めた鑑別の要点を,呼吸器細胞診の最前線で活躍する執筆者によって解説.呼吸器細胞診に従事するすべての医療者にとって,日常の細胞診断業務における安全な診断と的確な診療に役立つ一冊である.
【発刊にあたって】
この度、『非悪性呼吸器細胞診アトラス~肺癌との鑑別に悩んだときに~』が上梓されました。本書の作成にご協力いただいた執筆者に対し心から感謝申し上げます。
呼吸器領域における細胞診は、予防医学から診断、治療医学まで幅広い領域をカバーしています。そして現在、肺癌は日本におけるがん死亡の第一位を占めており、予防、早期診断、そして早期治療が求められていますが、進行した状態で診断される場合が少なくなく、満足のいく治療結果が得られているとはいいがたい状況です。ご存じのように、呼吸器細胞診の多くはこの肺癌の発見や診断に深く関わっています。しかし、その鑑別診断として良性腫瘍であったり、炎症性疾患であったり、あるいはびまん性疾患や再生変化などであったりすることが以前から問題となっています。
こうした背景から、2017年5月の第58回日本臨床細胞学会総会春期大会(会長:植田政嗣先生、大阪にて開催)においてワークショップ「知って得する呼吸器疾患の細胞診と画像診断」を開催したところ、思いのほか反響があり、本書の企画を思いつきました。呼吸器細胞診に欠かせないのは、細胞形態の正確な把握はもとより、蛋白発現と免疫染色、遺伝子レベルの知識、そして進歩の著しい画像診断であると考えられます。そこで本書では、上記ワークショップの演者を主体とした呼吸器細胞診の最前線で活躍する執筆者によって、肺癌との鑑別に悩んだ際に役立つ細胞診アトラスとして、上気道から気管支、肺における代表的な非悪性病変に焦点を当てて、細胞像に画像診断を含めた鑑別の要点を解説しました。鑑別に問題となる疾患のすべては網羅していませんが、呼吸器細胞診の診断に悩んだときに参考になることを期待します。そして本書が、日常の細胞診断業務において、安全な診断と的確な診療に役立てば幸いです。
最後に、本書の企画、編集に多大なるご尽力を頂いた南江堂の皆様に深謝いたします。
2019年12月
佐藤之俊
塩澤哲

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