ビーチャムのモノラル録音を、入念なデジタル化と修復作業を施し現代に甦らせた、初CD化だけでなく、収録曲の3分の2は新たにHDリマスターを。さらに過去のリマスターを基にした音源も、音質、音程、ノイズ、曲間の処理もこだわってマスタリング。
サー・トーマス・ビーチャムは、レオポルド・ストコフスキーと並び、初期オーケストラ録音史における最も影響力のある先駆者の一人です。両者は共に、その輝かしい音色と躍動感あふれる表現によって、蓄音機によるオーケストラ再生の可能性を大きく広げました。1932年、ビーチャムが精鋭を集めてロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を結成したことは、最高水準の芸術性と卓越した演奏技術を誇る、新たな時代の幕開けとなりました。彼は、ロンドン・フィルが持つ万華鏡のような音色、切れ味の良いリズム、そして緻密なアンサンブルを、いかにして巧みに録音に収めるかを早くから心得ていました。その手法は1946年にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を創設した際にも活かされ、両オーケストラとの数多くの録音活動を通じて、録音史における芸術性・技巧・音響美の伝説的な水準を確立したのです。本ボックス・セットには、彼がコロンビア・グラフォフォン社およびHMV(His Master's Voice)レーベルに残したモノラル録音のすべてが収録されています。これはワーナークラシックスから発売された彼の旧EMIステレオ録音集の姉妹編とも言えるものであり、その輝かしい魅力と高揚感に満ちた演奏を、これまで以上に鮮明に伝えています。ここに収録された録音の多くは、オリジナル音源から新たにHDリマスタリングが施されており、その大半が今回初めてCD化されるものです。
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ワーナーミュージック・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2025/08/08)
サー・トーマス・ビーチャムは、初期オーケストラ録音史における中心的存在であり、グラモフォン(蓄音機)を用いた高品質なオーケストラ再生の先駆者でした。1932年にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(LPO)を創設し、「自らが指揮した中で最高のオーケストラ」と大胆に評したこの楽団のデビューは、「電撃的」と称賛されました。ビーチャムは録音に財政的安定と世界的な宣伝効果の可能性を見出し、LPOを単なる演奏会の団体としてではなく、「録音のためのオーケストラ」としても位置づけたのです。これは当時としては革新的な考え方でした。
1946年にはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)を創設し、その手法を再び実践。両オーケストラとの録音は、芸術性・技巧・音響のすべてにおいて伝説的な水準を確立しました。ビーチャムは奏者の準備を徹底させ、ソリスト気質を備えた首席奏者を選び抜き、楽譜には青鉛筆でフレージングやダイナミクスのバランスを細かく書き込みました。この徹底した姿勢が、完璧な音程の実現にもつながっています。
彼の指揮スタイルは、自由闊達さと厳格な規律が磁力のように融合したきわめて個性的なもので、オーケストラと緊密な関係を築いていました。録音には、鋭いダイナミクスの切れ味と、即興的でロマンティックな柔軟性が一体となった演奏が刻まれており、芸術性と技巧が最高潮に達した時代の到来を証明しています。彼が残した録音遺産は、今なお強烈な存在感を放ち続けているのです。
この伝説的録音を現代に甦らせるため、入念なデジタル化と修復作業が施されました。音源は可能な限り最良の素材から選ばれ、さらにオリジナルの金属原盤からプレスされたレコード盤まで用いて、オリジナル音源の忠実性を損なうことなく、精密なノイズ除去や音程補正が行われています。全839トラック中、3分の2にあたる558トラックが新たにHDリマスターされており、ビーチャムの録音キャリアと才能の卓越性を鮮やかに浮かび上がらせます。さらに過去のリマスターを基にした多くの音源も、音質、音程、ノイズ、曲間の処理もこだわってマスタリングされています。
[今回のリマスターで、特に大きく改善された録音]
モーツァルト:交響曲第34番 & ベートーヴェン:交響曲第2番(CD1)
ディーリアス:歌曲集(CD13)
ブラームス:交響曲第2番 & ベートーヴェン:交響曲第2番(CD19)
モーツァルト:『魔笛』(CD24-25)
シューベルト:交響曲第5番 & 第8番(CD26)
ビゼー:『カルメン』組曲、グリーグ:『ペール・ギュント』組曲、フランク:交響曲、ウェーバー:『魔弾の射手』序曲(CD29)
チャイコフスキー:交響曲第3番(CD32)
シベリウス:タピオラ(CD33)
ドヴォルザーク:金の紡ぎ車(CD35)
ベルリオーズ:幻想交響曲(CD51)
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ワーナーミュージック・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2025/08/08)
また、96kHz/24-bitと192kHz / 24-bitのHDマスターをわざわざCD規格の容量に圧縮しているため安易に音が良いとは言えないのでは?
なお、先にリリースされたステレオ録音全集(35CD)のうちArt & Sonのリマスタリングの一部は高音域を強調し逆に低音域が物足りない水気を失った干からびた潤いがない「高音過多/低音過小」な音で、これ以外の過去の音源も改善されたとは言い難い。