<タワーレコード渋谷店30周年記念企画>テューレックが最後に遺した1998年収録のスタジオ録音盤が初出時以来待望の国内盤再発。阪田知樹氏による新規序文解説付!
バッハのスペシャリストと評されたロザリン・テューレックは1914年にシカゴに生まれ、9歳で公開リサイタルを開催するほどの早熟振りでした。その後ジュリアード音楽院で学んだ後、アメリカ各地でコンサートを行うなど幅広く活躍し、1957年にはヨーロッパにもデビューしています。ピアノ以外でもチェンバロや電子楽器にも興味を持ちテルミンも演奏するなど、鍵盤楽器に対して多彩な面も持ち合わせていました。7種の録音がある「ゴルトベルク変奏曲」でも、チェンバロでの演奏を1種残しています('70年代終わりのCOLUMBIAへの録音)。コンサート・ピアニストと並んで後進の育成にも尽力し、母校のジュリアード音楽院での長く教壇に立ちました。また、彼女のバッハ演奏は同業のピアニストに与えた影響も大きく、非公式ながらもグールドが唯一、演奏を参考にしていたことも一部で知られています。録音もバッハを中心に多数残されており、VAIレーベルに私的に録音した「ゴルトベルク変奏曲」が後にCD化されて以降、世界中のバッハ愛好家たちが彼女の存在に気付き、その後'90年代に一大ブームを巻き起こしました。近年でも2025年1月に日本のテレビで特集されて以降、ブームが再燃している状況にあります。
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タワーレコード(2025/07/04)
このDGへのデビュー盤となった1998年録音の「ゴルトベルク変奏曲」の発売は上記一大ブームがきっかけとなったとは言え、テューレック自身の集大成とも言える重要な音源です。1999年に発売されると世界中で大きな話題となりました。84歳にしてDG初録音となったこの盤でライヴも入れると通算7回目の録音であること自体驚きですが、その全てに対し驚異的な演奏が行われています。テューレックのバッハ演奏には派手さは一切無縁で、ゆったりとした悠久の流れさえ感じさせます。さらに一歩踏み込んだ深く瞑想的な演奏と共に、細部まで行き届いた繊細さを持ち合わせているのが素晴らしく、彼女の演奏における大きな美点でしょう。20代前半でバッハの主要作品を何度も取り上げたテューレックは、若くしてバッハの権威と言えるだけの実績を既に残していました。生涯をバッハの研究と後進の育成にも力を費やした彼女のバッハ演奏の重要な軌跡が、これらの「ゴルトベルク変奏曲」の7回にわたる録音にも残されています。1947年に最初のセッション録音をピアノで行い、モノラル末期にはEMIにも収録、ステレオ期に入り'70年代後半にはチェンバロでCOLUMBIAに録音し再度ピアノで'80年代初めにセッションで収録、その後私的に録音した音源が後年VAIレーベル等でリリースされ世界中のバッハ愛好家を驚かせました。その後も'90年代半ばのサンクト・ペテルブルクでのライヴ音源を経て、1998年にDGに収録されたのがこの7回目の最後の録音です。演奏時間は5回目のVAIへの私的なセッション録音を除いては全て80分以上と、他のピアニストと比較し非常に長く、DG盤ではさらに91分となっています。ゆったりとしたテンポながらも演奏は絶妙な強弱のバランスとペダリング、そして深く楽曲を掘り下げた故の表情の多彩さが聴き取れ、一度聴いたら離れれなくなるほどの完成度に驚くでしょう。そこにあるのは紛れもない「芸術」の極致であり、聴き手を感動させる演奏が詰まっています。今回の復刻は国内盤では1999年以来の再発となりますが、初出時に収録されていたテューレック自身の解説も収録してありますので、資料的にも注目です。尚、今回の販売価格は初出時より半額以下となっており、お求めやすくなっています。
今回、初出時の各曲解説の再掲に加え、新規で著名なピアニストである阪田知樹氏による序文解説を掲載しました。必読の内容です。また、ジャケット・デザインもオリジナルのものを採用しています。今回のVINTAGE COLLECTION+plus Vol.35は全3タイトルを発売します。
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タワーレコード(2025/07/04)