高い評価を博しスマッシュヒットを記録した前作から3年半、ケイト・ル・ボンの新作が完成。近年プロデューサーとしても大きく活躍する彼女の7枚目のアルバム『ミケランジェロ・ダイイング』、リリース。 (C)RS
JMD(2025/06/11)
高い評価を博しスマッシュヒットを記録した前作から3年半、ケイト・ル・ボンの新作が完成。近年プロデューサーとしても大きく活躍する彼女の7枚目のアルバム『ミケランジェロ・ダイイング』、リリース。
●ゲスト:ジョン・ケイル
純粋な感情に導かれて制作されたCate Le Bonの7枚目のアルバム『Michelangelo Dying』は、彼女が作ろうとしていたアルバムの本質を覆すものとなった。全身を蝕む心痛の産物であるこの作品は、愛についてのアルバムを書くことへの抵抗を彼女の感情が凌駕し、ある種の悪魔祓いへと変貌を遂げたものだ。そこから浮かび上がるのは、癒える前の傷を写真に収めようとする、美しく虹彩に富んだ試みである(しかし、その過程で、傷を掻きむしることにもなる)。ハイドラ、カーディフ、ロンドン、そしてロサンゼルスを行き来しながら制作された『Michelangelo Dying』は、彼女の心の中にアルバムの風景と心痛の多くが存在するカリフォルニアの砂漠で仕上げられたという点が、特筆すべきところだ。そこには、明言されていることと同じくらい、語られていないこと、むしろ不明瞭なことが多い。Le Bonの豊かで深い質感のアレンジは、彼女が言葉を持たず、言葉を見つけようとしなかったときに、何層にも積み重なっていった。音楽的には、Le Bonが演奏とプロデュースの主導権を握るようになった直近2枚のアルバム(2019年の『Reward』と2022年の『Pompeii 』)で形づくられたサウンド(心を持った機械)の継続と拡大がある。加えて、John Caleの存在もある。アルバムのプロデュースは、長年のコラボレーターであるSamur Khoujaと共同で手掛けた。
発売・販売元 提供資料(2025/06/10)
ウェールズ出身のアーティストにとって7枚目のアルバム。ジョン・ケイルなどの助力を得ながら、デッド・カン・ダンスやコクトー・ツインズが脳裏に浮かぶ幻夢的な音を響かせている。AORの香りが漂う"Mothers Of Riches"を筆頭に、キャッチーな旋律を紡げる高い作曲力を楽しめる内容だ。情動の機微を上手く描いた散文詩的な歌詞も聴きどころ。
bounce (C)近藤真弥
タワーレコード(vol.502(2025年9月25日発行号)掲載)