<渡邉曉雄 没後35年企画>
海外で高く評価された、世界初のステレオ録音によるシベリウス:交響曲全集。旧日本フィルとの伝説の名演を初SACD化!若林駿介氏による優秀録音盤。日本コロムビア所蔵のオリジナル・アナログ・マスターテープからのリマスタリングによる世界初SACD化!新規解説付
1962年当時、画期的な企画であったステレオ録音によるシベリウスの交響曲全集。シベリウスを最も得意とする渡邉曉雄(1919~1990)が主兵日本フィルと組んだ渾身の名演として今日まで聴き継がれてきました。今回は当社所有のアナログ・マスターテープからリマスタリングを行い初SACD化。音場・音質が鮮やかに向上しています。CD層も今回のリマスタリング音源を使用しています。
ステレオLPの黎明期の1962年に録音されたこのシベリウスの交響曲全集は、世界初の全集ステレオ録音という記念碑的なセットとして知られています。指揮者の渡邉暁雄(1919~90)は日本人の父とフィンランド人の母の元に生まれており、1958年には日本におけるシベリウス紹介の功績により、フィンランド政府より第一級獅子勲章を受けるなど、すでにシベリウス指揮者として広く認知されていました。加えて、1956年6月には文化放送の支援を得て日本フィルハーモニー交響楽団(以下、日本フィルと略記)を創設。常任指揮者、常務理事となって同楽団の発展に尽くし、創立7年にしてNHK交響楽団と並ぶ日本を代表するオーケストラへと育成しました。
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タワーレコード(2025/05/29)
最初に日本フィルの実力に目をつけたレコード会社はアメリカのCRIで、1959年4月にウィリアム・ストリックランドと渡邉暁雄の指揮で一連の現代アメリカ音楽を録音しました。1961年5月には日本コロムビアとの録音提携契約が成立。第1回発売は1961年11月で、間宮芳生:ヴァイオリン協奏曲(品番:OS162[30cmLP])、小山清茂:交響組曲《能面》、柴田南雄:シンフォニア、武満徹:樹の曲(品番:OS163[30cmLP])、シューベルト:交響曲第8番《未完成》(第3楽章付き、品番:ZS20[25cmLP])の3点がリリースされました。録音は、日本フィルの親会社である文化放送のディレクター草刈津三、ミクサーは若林駿介によるものでした。このうち、OS162とOS163の2枚は、昭和36年度の文化庁芸術祭奨励賞を受賞するなど高く評価されました。こうした好評を受けてシベリウス:交響曲全集が録音されました。
渡邉&日本フィルは実演で第1番を1960年2月27日、第2番を1957年4月4日(日本フィル第1回定期演奏会)、第5番を1959年4月28日(日本初演)、第6番を1961年5月22日(日本初演)に演奏していましたが、第3、4、7番の3曲は実演より前に収録されていたことが判ります。また第3番の日本初演は1977年1月21日の渡邉暁雄&東京都交響楽団で、おそらくこの録音が日本で初めて生音で鳴り響いた第3番でした。渡邉&日本フィルが第3番を初めてステージで披露したのは録音から19年後の1981年6月18日、第4番は1981年4月20日、第7番は録音の翌年の1963年6月13日でした。また、1981年の「シベリウス・チクルス」と並行してデジタルでセッション録音されたのが、日本フィル結成25年を記念したシベリウス:交響曲全集の再録音盤でした(2024年5月に当企画のORT復刻SACDハイブリッド盤で発売中。現品番:TWSA1170)。この再録音盤は、1981年度第19回レコード・アカデミー賞日本人演奏部門を受賞しています。
しかし、この1962年盤は初出時には日本のレコード雑誌であまり高い評価を得られませんでした。レコード芸術1963年1月号、「音楽の友」誌1963年1月号、ともに推薦盤を逃しています。しかし、渡邉&日本フィルのシベリウスの交響曲全集は、海外のシベリウス愛好家に注目され、日本盤を入手して紹介する評論家もいました。そして1966年11月、渡邉&日本フィルのシベリウス:交響曲全集は、当時日本コロムビアとライセンス契約を結んでいた米CBSのエピック・レーベルから世界発売されることとなりました。そして先入観の無い、アメリカの批評家から高く評価されました。とくに「High Fidelity」誌1967年1月号の名物評論家ハリス・ゴールドスミス(1935~2014)の評は熱烈でした。
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タワーレコード(2025/05/29)
「日本人の父とフィンランド人の母の間に生まれた渡邉は、明らかにシベリウスの血筋を受け継いでいる。(略)しばしば低俗化する第2番では高貴な威厳のある大伽藍を築き、第3番では力強く揺るぎない広がりをもたらす。(略)第4番は厳しい緊張感をもって前進し、一方第6番(あまりに軽視されている作品)はほとんど室内楽的な親密さで慰めてくれる。第7番は、必然的に氷のような論理で進む。(略)彼は生まれながらのシベリアンだと私には思える。」。
海外発売と高評価を受けて、廃盤だった全集は1966年11月に米エピック発売と同時に再発売され、1967年9月には、単独曲としてのステレオ世界初録音であった交響曲第3番と第6番が1枚物で発売されました。その後、1981年にデジタル再録音されたため、この1962年盤はなかなかCD化されませんでしたが、1996年11月に初CD化(品番:COCO80406~9)され、2012年12月にタワーレコード限定盤として再発売されました(現在廃盤。品番:TWCO-29)。そして今回がオリジナル・アナログ・マスターテープに遡っての初SACD化となります。なかでも第4番は録音技師の若林駿介氏が2008年7月1日に亡くなった際、9月の追悼会で想い出のCDとして参列者に配られた録音で、同時に第4番は渡邉氏が最も好んでいた作品でもありました。SACD化の音質改善により、両氏の思いのつまった名演は、聴き手に一層強く迫ってくることと思います。
今回の復刻は日本コロムビアが厳重に保管していたオリジナルのアナログ・マスターテープより新規でハイレゾ化を行ったマスターを使用していますので、従来のCD以上の音質向上となりました。今回の音源も極力原音を損なわずに、最新の技術とエンジニアの経験を持ってマスタリングを行っていますので、従来のCDと比較して各楽器の鮮明な音色や間接音、倍音の豊かさをより感じ取れます。また、解説書は新規の解説を収録しました。さらに解説書には単売時のLP写真もカラー(一部モノクロ)で掲載しています。
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タワーレコード(2025/05/29)