ヒタ・リーの再来!?バーラ・デゼージョのメンバーとしても知られるシンガー・ソングライター、ジュリア・メストリの新作は、70's~80'sのディスコ/AORサウンドへの愛溢れるオマージュ作!
2022年にリリースしたアルバム『Sim, Sim, Sim』をもってMPBシーンに衝撃を与え「トロピカリアの再来」と称されたバンド、バーラ・デゼージョ。そのメンバーとして知られるジュリア・メストリが、ついに待望の3rdアルバム『Maravilhosamente Bem』(2025)をMr.Bongoからリリース。アルバムのプロデュースには、長年のコラボレーターであるガブリエル・キリーノ、ガブリエル・キント、ジョアン・モレイラらが参加した。
アルバムのコンセプトはあまりにも明確だ。すなわち、70's~80'sのディスコ/AORサウンドへの愛溢れるオマージュであり、まるで「ブラジルのロック・クイーン」ヒタ・リーによる名作『Rita Lee(1979)』と『Rita Lee(1980)』をひとまとめにしてみせたかのようだ。ディスコティックなテイストは、ヒタ・リーはもちろん、「ディスコの女王」ドナ・サマー、「ブラジリアン・ディスコ・クイーン」レディー・ズー(Lady Zu)といったディスコ・ディーヴァたちへのオマージュであり、全体に通底する優雅なムードはシャーデーを思わせる。アルバム後半の「Marinou, Limou」において、80'sのシンガー・ソングライターの中でも特に洗練されたサウンドで知られるマリーナ・リマをフィーチャーしているあたりも確信犯的だ(タイトルはマリーナ・リマの名を模しているのだろう)。
収録曲は、ディスコティックな表題曲「Maravilhosamente Bem」、マリーナ・リマを思わせるAORタッチのシングル「Sou Fera」、ホラー映画にインスパイアされたという「吸血鬼」を意味する「Vampira」、ボサノヴァ風味の「Sentimento Blues」、甘美なストリングスによるインストの小品「Interludio dos Amantes」など、非常に多彩だ。MPBに70's~80'sのテイストを織り交ぜたサウンドは、同じくバーラ・デゼージョのドラ・モレレンバウムによるデビューアルバム『Pique』(2024)や、ディスコ・ブギーに接近したアナ・フランゴ・エレトリコの3rdアルバム『Me Chama de Gato Que Eu Sou Sua』(2023)にも通じるものがあるだろう。
80'sのバラード/MPB/ディスコからインスピレーションを得た本作で、ジュリア・メストリは自身のクリエイティブなヴィジョンを魅惑的な形で表現している。スター性あふれるステージングで観客を魅了するジュリア・メストリらしく躍動的で煌びやかな作品だ。限定ブックレット付きの豪華仕様でのリリースとなる。
発売・販売元 提供資料(2025/04/23)
バーラ・デゼージョの一員である彼女の2作目だが、このポップな突き抜けぶりはちょっと予想外というか。ストリングスがキラキラと舞い踊るディスコ調の表題曲など全編80sポップにオマージュを捧げた音作りなのだが、妖しげなメロウさが魅力の"Vampira"や透明感と静謐さを湛えた"Pre Lua"など彼女のパーソナリティがより透けて見える曲も麗しいし、マイケル・フランクスを想起させるバラード"Sentimento Blues"にも惚れ惚れさせられ、トータル36分ずっと興奮させられまくり。マリーナ・リマをゲストに迎えたアーバン・グルーヴ"Marinou, Limou"がカッコ良すぎてクラクラしちゃう。
bounce (C)桑原シロー
タワーレコード(vol.499(2025年6月25日発行号)掲載)