1966年、すでにウルグアイでは有名な音楽家/ギタリストとして活躍していたエドゥアルド・マテオの伴奏をえて歌手としてデビューしたディアネ・デノイール(ダイアン・デノアー)。フランソワーズ・アルディとアストラッド・ジルベルトに影響を受けていたという彼女は、他の歌手とは一線を画すスタイルで、シャンソンからボサノヴァまでをポルトガル語、英語、フランス語で歌い、そこにジャズの影響をブレンド。次第にこの芸術的なデュオは評判を呼び、素晴らしいソングライターとしての地位を築いていった。1972年にリリースされたセイムタイトルのアルバムはそんな二人の魅力を結実させたものだったが、本作はそれ以前、1966年から68年のあいだに録音されたさまざまな音源を集めたものだ。
レパートリーはマテオの代表曲である「Y hoy te vi」「Esa tristeza」「Mejor me voy」といった曲も収録しているが、すべてディアネにインスパイアされたバージョンになっていたり、「Corcovado」「Agua de beber」など72年作では聴くことのできないボサノヴァ名曲カバーが含まれている点が実に興味深い。なかには音質的に優れているといえないものも含まれているが、かえってそれが自主盤的なローファイ感を醸し出している点も魅力的だ。
1998年と2008年にアルゼンチンでCD化されたものの、それも長らく廃盤。レコード化は今回が初となるだけに、ウルグアイ発のレーベル=Little Butterflyによる快挙と言えるだろう。
発売・販売元 提供資料(2025/04/01)
ウルグアイの至宝コンポーザー、エドゥアルド・マテオが、女性シンガー、ディアネ・デイノールを迎えて67年(推定)に制作した、幻のボッサ名盤が待ちに待った久々のリイシュー。《おいしい水》や《イパネマの娘》といったボッサ・クラシックスからシャンソン、マテオの自作まで演目は多彩だが、全編に漂うアシッドで憂鬱なムード、そして頼りなげに浮遊するディアネ嬢の気怠い歌声は、やるせないほどにサウダージ。カエターノ&ガルの『ドミンゴ』に匹敵するほど独特の磁場を持った儚くも美しい“曇り空 の”ボサノヴァ・アルバムだ。
intoxicate (C)田中幹也
タワーレコード(vol.78(2009年02月20日発行号)掲載)