男女の混声ヴォーカルをフィーチャーしたカナダのオルタナティブ・ロック・バンド、MOTHER MOTHER(マザー・マザー)。
今年結成20周年を迎える彼らにとって記念碑的作品になるであろう通算10作目『NOSTALGIA』。20年もの時を経た初期サウンドの記憶がバンドの音楽性、リリシズムとして美学を新たな頂きへと押し上げる。音楽的だけでなく美学的にも原点回帰を図った最新作が登場!
男女の混声ヴォーカルをフィーチャーしたカナダのオルタナティブ・ロック・バンド、MOTHER MOTHER(マザー・マザー)。2000年代はじめに結成され、カナダのインディー・シーンを中心に活躍していた彼らは2020年頃からTikTokで「Hayloft」などが注目を集めストリーミング・ヒットに。そして2021年、ワーナー・レコーズからメジャー・デビューを果たした。昨年メジャー・レーベルからの第2弾となる『GRIEF CHAPTER』をリリースした彼らは、同年初来日公演も実現、日本のファンにも存在感をしっかりと刻んでいった。
その彼らが新たなアルバムを完成させた。通算10作目のアルバムとなる『NOSTALGIA』は、今年結成20周年を迎える彼らにとって特別な作品になると言えるだろう。ファンを引き付けて止まないMOTHER MOTHERの創造性と独自性を育みながら、バンドの音楽性、リリシズムとして美学を新たな頂きへと押し上げた本作は、まさに記念碑的なアルバムであり、異世界の風景や神話的な生き物の生き生きとしたイメージを通して、疎外感、実存主義、自己愛と自己嫌悪、男女の役割、スピリチュアリティといったテーマを探求する、ハートフルであると同時にダークな作品だ。またバンドの専属クリエイティブ・ディレクター、モリー・ガルデモンドがデザインしたアルバム・ジャケットに描かれているユニコーンは、アルバムのマスコットであると同時に、決定的なイメージとなっている。MOTHER MOTHERが動物をアートワークに取り上げたのは2011年の『EUREKA』以来のことであり、このユニコーンは音楽的だけでなく美学的にも原点回帰を象徴しているという。「"ノスタルジア"がそうであるように、時代が振り返るにつれ、私たちの記憶は誇張された大げさな質感、形、感情へと変容していく。これらの新曲は、20年の経験によって濾過された初期のマザー・マザーのサウンドを反映しているんだ」アルバムのテーマについてバンドはそうコメントしている。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2025/03/21)
『NOSTALGIA』は大きなダイナミクスで呼吸し、圧縮しすぎたモダンなウォール・オブ・サウンドのアプローチから離れた作品となっている。アルバムのオープニングを飾る 「Love to Death 」は、2008年の『O My Heart』セッションで初めてデモが作られ、そのライヴ・ヴァージョンの非公式音源は10年前からインターネットで飛び交っており、また「On and On (Song for Jasmin) 」は、プラトニックなラブレターのような、バンドメイトへのリアルで純粋な頌歌である。その他にもアルバム収録曲の「Little Mistake」は、何年も未完成のまま放って置かれていた曲を形にするべきだとドラマーのAli Siadatがメンバーに提案したものであり、そしてリード・シングルとなる「「Make Believe 」は、まるで空想とイマジネーションのジェットコースターに乗っているかのようなサウンドと歌詞が織りなすアシッド・トリップだ。「この曲では、自分自身の人生哲学に少し耽ってみた。マジカルな思想、相互の繋がり、それから宇宙的放浪――まあ、いわゆるヒッピー的なものだ」フロントマンのRyan Guldemondはそう説明する。アルバムの後半に収録されている「Finger」は社会の二重基準を嬉々として掘り下げ、羞恥心と官能性の矛盾を鏡のように照らしている。Ryan曰く、この曲は"昔ながらのMOTHER MOTHERらしい曲でありながら、どういう訳だかアルバムで最もモダンなトラックでもある"という。そして「Me&You」はRyanがレコーディング中に買った新しいバリトン・アコースティック・ギターで書いた最初の曲だそう。「新しい楽器を手にする度に、新しい曲が隠れていると人は言うんだ」そう彼は語っている。
10枚目のスタジオ・アルバムを制作するにあたり、MOTHER MOTHERは、創造性の自由という、数少ないアーティストにしかできないことを達成し、その結果、彼らが今まで作り上げたものにに忠実でありながら、次の20年に向けての姿勢を感じさせるアルバムに仕上がった。「バンドとして、最高の曲やアルバムは、流行を追い求めることにとらわれないものであることが、振り返ってみるとよくわかる。アーティストの初期の作品が、より本物に感じられるのはそのためだ」そうバンド自身も語っているが、だからこそMOTHER MOTHERの過去を反映し、彼らが作り上げたサウンドを再構築させた『NOSTALGIA』は、これまでで最も純粋にパワフルで刺激的な芸術的声明なのだ。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2025/03/21)
結成20周年を迎え、いまカナダでもっともアツいと言われている5人組の記念すべき10枚目のアルバム。フォークからの影響も窺える男女3人のハーモニーをプログレッシヴなバンド・サウンドに落とし込み、ひとクセもふたクセもあるポップ・ロックの数々を楽しませる。1-2!という掛け声で盛り上がるアンセミックなフォーク・ナンバー"Me & You"はライヴで聴きたい。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.500(2025年7月25日発行号)掲載)