夕暮れのほんの一瞬、空は鮮やかな琥珀色に染まる。昼と夜の狭間に広がる劇的な色彩の輝き。モンゴル生まれミュンヘン在住のアーティストEnjiによる新作はそんな空気を感じさせる。本作で彼女は自身の成長と二つの世界の狭間で生きることに伴う複雑な感情を映し出している。文化の狭間にいるという漠然とした感覚を、対立ではなく成長と自己発見の場として捉えた作品だ。Elias Stemeseder (ピアノ)、Robert Landfermann(ダブルベース)、Julian Sartorius(ドラム)、共同作曲者でもあるPaul Brandle(ギター)といった名高いジャズ・ミュージシャンたちとともに彼女は伝統を振り返るだけではなく「故郷」という感覚を抽出し遠くから見たときにこそ気づく小さな喜びを音に込めている。
発売・販売元 提供資料(2025/02/27)
ドイツを拠点に、故郷モンゴルの伝統的な歌唱や旋律をコンテンポラリーなジャズの中に落としこんだ前2作で高い評価を得たSSWエンジ。離れて気付く故郷のよさというのがあるが、この4作目では、異なる2つの文化や社会の間で改めて自分が何者かを捉えなおした作品と言え、これまで牧歌的でありながら都会的洗練性も併せ持った歌声や歌唱を徐々に確立させてきた彼女がさらに自身の音楽像を明瞭にさせた内容となっている。ドイツの新世代ジャズ・バンドFAZERのギタリストPaul Brandleや、ハーバートとの共演でも知られる鬼才ドラマーJulian Sartoriusらによる演奏にも注目。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.175(2025年4月20日発行号)掲載)