泡のようなボクらの日々
ミニアルバムやシングルをコンスタントにリリースを続けるD.W.ニコルズだが、フルアルバムとしては2018年の『HELLO YELLOW』以来、7年ぶり通算5作目のリリースとなる。
自由に漂い、時に儚くはじける「泡」と、「Our」(ボクらの)がかけられた、"泡のような僕らの日々"というコンセプトで、自由さや元気さも健在ながら、二人編成になってより表現力を増したパーソナルな楽曲やノスタルジックな楽曲が輝きを放つD.W.ニコルズならではのライフソング集だ。
日常の小さな幸せや、身近にある大切にすべきものにフォーカスし、時折ユーモアを交えながら等身大の言葉で紡ぐわたなべだいすけの歌詞とメロディー。そしてその歌詞とメロディーに寄り添いながらルーツ・ミュージックをベースに楽曲を彩る、鈴木健太のギターをはじめとする様々な弦楽器とサウンドプロデュース。二人のチームワークは抜群で、20年培ってきた二人の信頼関係までもが垣間見える。
長きにわたり掲げてきた"ネオ・カントリー・ポップ"なサウンドも健在ながら新たな音楽的アプローチも散りばめられ、音楽の喜びに満ち溢れた作品になっている。そういった音楽的挑戦こそが長く自分たちの音楽を続ける秘訣だとはメンバーは語るが、音楽的に貪欲な作品であるにも関わらず、どこを切り取ってもあくまで普遍性に拘ったポップスになっており、結成当初から「10年後も聴ける音楽を」と謳っていた彼らが結成20周年を迎えた今だからこそ辿り着いた境地とも言える、絶妙なバランスの音楽になっている。
楽曲の構成やアレンジにおいても「パッと聴きの良さ」を狙うことなく敢えてオーセンティックな構成やアレンジで練られるなど、時代に流されず良いものを作るという明確な意図が込められている。 (1/2)
発売・販売元 提供資料(2025/02/19)
また作品通して印象的なのが、わたなべ&鈴木の二人によるハーモニー。正確にはハーモニー云々というよりも一緒に歌っているスタイル。わたなべだいすけは作品毎に歌唱力を増し、本作では声のトーンも芯がありつつ滑らかで抜群なのにも関わらず、それを推して聴かせようとするのではなく、とにかく二人一緒に全力で歌う場面が多いのである。そこにこの二人の強さと、二人でニコルズの音楽を作っているのだという強い自負が現れるている。そして聴く側は飽きることなく何度も聴きたくなり、一緒に口ずさみたくなるのである。
幸せとは何かを自問自答するM-2「それだけで」はD.W.ニコルズが20年前から歌い続けてきたことそのもののような楽曲で、わたなべの淡々としながらも熱を帯びたヴォーカルと、鈴木のアーシーさの中に艶やかさが光るギターが絡む珠玉のミディアムバラード。これを含む新曲8曲に加え、2022年にシングルとしてリリースされたライブ・アンセム「Beautiful Days」と、2023年リリースのミニアルバム『EVERGREEN』から「笑えるように」がリミックスされて収録、さらにNHK Eテレおかあさんといっしょのために書かれた「だいじなともだち」は歌詞が書き加えられ、D.W.ニコルズのセルフカバーとして収録されている。
20年という年月、そして日本全国を飛び回り活動し続け、音楽で生きているというその自信が、二人の自然体という形で作品に現れ、聴く者の心をほぐしリラックスさせる。そして音楽を心から楽しんでいるフレッシュさは、聴くものを勇気づける。儚く切ない「泡」のような表現も多いこの『泡 DAYS』だが、聴けば聴くほど、それは自由な「泡」になり、そこに込められた肯定感であることに気づき、またそっと背中を押してくれる、そんな作品だ。 (2/2)
発売・販売元 提供資料(2025/02/19)