ルネサンスの教会へも輝かしい未来へも、一瞬でとんでいける恒星のごとき演奏
大バッハが生涯をかけてたくわえた知識と技術の結晶体に
現代最先端のさらに先から吹き込まれた、心ふるわす生命のきらめき
「マタイ受難曲」「聖母マリアの夕べの祈り」「モーツァルトのレクイエム」などの衝撃的なリリースで音楽界の最先端を牽引しているピションとピグマリオンによる次なる音盤は「ロ短調ミサ」。バッハが自らの声楽作品の総決算として取り組み、晩年まで筆を執り続けた大作を、ほとばしるような生命力で演奏しています。
きらめく明るさと大胆なスピード感にあふれていながら、深みや情感を損わぬように楽節一つ一つを非常に丁寧に処理していて、バッハが書き尽くしたあらゆる技法が空間に美しく浮かび上がってきます。古風なスタイルから軽やかなアリア、壮麗なフーガと様々な楽曲が並び、輝かしい響きもあれば痛ましい響きもある「ロ短調ミサ」を、端から端まで瞬時に行き来するような機動力で縦横無尽に飛び交いながら演奏、それでいて場面転換を意識させない自然な構成力と大きな視野を備えているのが圧巻です。舌を巻くほどの複雑なフーガを一気呵成に歌い切ったかと思えばふとしたロングトーンで永遠を感じさせ、強烈なクレッシェンドを炸裂させたかと思えば柔らかな響きで場を和ませ、次々と押し寄せる音楽が一時たりとも退屈を許しません。また、人生や世界を力強く肯定する意志が感じられるのもピションの魅力。かなしみののちにゆっくりと起き上がって前進していく終曲はとても感動的です。
器楽・声楽ともに腕利きぞろいのピグマリオン。ピションのコントロールも隅々まで行き届き、合唱は人数もあり迫力十分。多層的に絡み合う楽音と美しい残響が理想的に収録された録音の素晴らしさも特筆です。新しいバッハの世界を告げる輝かしい音盤の誕生といえるでしょう。
HARMONIA MUNDI
発売・販売元 提供資料(2025/03/13)
Conductor Raphael Pichon and his ensemble Pygmalion have recorded several of Bachs shorter mass settings, but the Mass in B minor, BWV 232, seems to bring out the best from him and the musicians. The Mass dates from 1749, a year before Bachs death. Much of it was drawn, as Bach often did, on earlier compositions, but he added new music, including a truly profound "Et incarnatus est," and showed his characteristic genius in putting together diverse materials into an imposing whole and imposing it is. Pichon delivers a performance with historical instruments (all beautifully played, and one will note especially the clean horn of Anneke Scott), but it is one that brings to mind the grandeur of traditional Bach performances. He has 18 sopranos and 16 string players, all kept in balance and given lots of energy and splendor. The soloists are another draw, and there is an alto, Lucile Richardot, instead of the almost requisite countertenor; one should also sample the work of tenor Emiliano Gonzalez Toro (he is Swiss, and his middle name has no accent mark) in the Benedictus. The sound environment of the Notre-Dame-du-Liban cathedral in Paris is well suited to the combination of big sound and sensitive balancing Pichon undertakes here on a richly satisfying Bach Mass in B minor. The album made classical best-seller charts in the spring of 2025. ~ James Manheim
Rovi
録音キャリア初期に、ALPHAレーベルにおいて「ミサ曲ロ短調」の原型を探る画期的なアルバム(ALPHA188)をリリースしたピション&ピグマリオンが、ついに「ミサ曲ロ短調」を録音!冒頭の「キリエ」は聴き手の予想を裏切るようなテンポの中で、過剰なほど濃密な音空間を生み出し、その後の解釈への期待感を煽る。曲による通奏低音の使い分けも作品に奥行きを与え、部分部分の個性を際立たせながらも全体の統一感を生み出しているところがすごい。合唱・独唱・オーケストラの完成度は言わずもがな。バッハ演奏史に輝かしい名を刻むこと間違いなし!
intoxicate (C)須田純一
タワーレコード(vol.175(2025年4月20日発行号)掲載)
この演奏ではその点ではすごくゆったりとしたテンポで入ってくるため、とても軟く感じる。
リヒターのような峻厳な演奏も好きだが、この優しく包み込む演奏も好感が持てた。