ウォルトン: 管弦楽作品集 第1集 - ヴァイオリン協奏曲、歌劇《トロイラスとクレシダ》による交響的組曲、他

ジョン・ウィルソンとシンフォニア・オヴ・ロンドンによる新しいシリーズはウィリアム・ウォルトンの作品集。第1集にはヴァイオリン協奏曲を含む3作品を収録しています。歌劇《トロイラスとクレシダ》は、当時のパートナーであったアリス・ウィンボーンからの影響を受けて構想されました。しかし、台本がやや冗長で扱いにくいうえに歌手たちの調達がうまくできず、1954年ロンドンの初演の際は、準備不足がたたり音楽面での評価は分かれてしまいました。この作品はその後、他の都市でも上演されたものの、結局批評家からは厳しい意見を受け、ウォルトンは改訂を行いました。このアルバムに収録されているのは、1987年、アレンジャー、クリストファー・パーマーが作品をもとに製作した4曲からなる交響的組曲です。各曲は登場人物や事件を表現しており、最後には悲劇的なクライマックスを迎えます。
ヴァイオリン協奏曲は、ヤッシャ・ハイフェッツからの委嘱作ですが、当時のウォルトンは映画音楽の作曲に心が動いており、こちらを優先すべきか迷っていたといいます。しかしここでもアリス・ウィンボーンが彼の背中を押しこの協奏曲が書かれることになりました。第2楽章の情熱的なタランテッラが作品を難度の高いものにしています。1938年に全曲が完成、翌年アメリカで初演。1943年にはオーケストラ・パートの改訂を行い、ウォルトンの代表作の一つとなりました。この曲のソリスト、チャーリー・ラヴェル=ジョーンズは1999年生まれ。15歳でロイヤル・フェスティバル・ホールでデビューして以来、世界各地の主要オーケストラと演奏を行い、ラジオやテレビで放送されています。2019年には日本の仙台国際音楽コンクール、2020年には上海アイザック・スターン国際ヴァイオリンコンクールに出場するなどコンクール歴も多く、現在はシンフォニア・オヴ・ロンドンのリーダーとしても活躍しています。序曲「ポーツマス岬」は1924年から25年に書かれた短い序曲。イギリスの風刺画家トーマス・ローランドソンのエッチングにインスパイアされた作品で、港の賑やかな情景をシンコペーションを多用したジャズ風の音楽で描いています。この序曲は世界中で繰り返し演奏され、使われた複雑なリズムも注目を集めました。
このアルバムは、オーケストラの多彩な音色と広大なダイナミックレンジをを高音質で伝えるSACDハイブリッド盤での発売です。
ナクソス・ジャパン

William Waltons Violin Concerto was composed for Jascha Heifetz. It is not an unknown work, but the last few decades dont reveal an abundance of recordings. This one by violinist Charlie Lovell-Jones would be welcome in any case, and there is much more to recommend the album, which made classical best-seller lists in early 2025. The violin concerto tops out a group of Walton pieces that had their day in the sun and remain eminently worth hearing. The Symphonic Suite from Troilus and Cressida is not just a digest of excerpts from that opera but an arrangement of its materials into four movements that, especially given the somewhat episodic nature of Waltons writing in general, create something that is almost a new symphony. Portsmouth Point, from 1925, was one of Waltons earliest successes; coming just after Facade, it depicts a 19th century drawing of a boisterous shoreline street scene. In each of these works, the Sinfonia of London under conductor John Wilson, an ideal conductor for this kind of music, maintains a precise high energy. Best of all is the concerto, which adds to that energy a close, complex interaction between orchestra and soloist. In the wiry virtuosity of the outer movements, Lovell-Jones may remind one of Heifetz, and the level of coordination between soloist and conductor is very high. It is enjoyable and keeps one on the edge of ones seat. An impressive Walton album throughout. ~ James Manheim