INORI - 高みから舞いおりる風のように

ここに漂う果てしない淋しさは、亡命者の望郷。―加藤登紀子

ロシア歌曲のスペシャリストとして研鑽を積んだ中村初恵。ウクライナ、チェコ、ポーランドなどスラヴ各国の名曲も原語で録音している。

現実のスラヴ世界は分断と対立の様相を呈しているが、世界に愛と平和を呼びかけるような選曲も見事で、初恵さんの透んだソプラノで歌われるこの曲集は、祈りに満ちた癒しの曲集となった。
伊東一郎(早稲田大学名誉教授)

＜中村初恵＞
「歌-祈り」をテーマに歌い続けるソーシャルアーティスト。東京音楽大学声楽科卒業。2003年、国立マリインスキー劇場のオーディションに合格し、ソリストとして劇場に所属。ラリッサ・ゲルギエワ女史(指揮者ゲルギエフの姉)の愛弟子として研鑽を積む。リムスキー=コルサコフ「雪娘」雪娘役、「皇帝の花嫁」マルファ役、また、歌曲の歌唱を高く評価され歌曲によるコンサートに数多く出演。ニューヨークにて音楽療育・療法を学ぶ。国立ヴュルツブルク音楽院(ドイツ)に短期留学。2004年「リムスキー=コルサコフ国際声楽コンクール」リムスキー特別賞を受賞。リムスキー=コルサコフの孫にあたるタチアナ女史より称賛を受け、リムスキー歌曲の伝承を託される。2005年「エレーナ・オブラスツォワ国際オペラコンクール」にて優秀歌唱賞、並びに、サンクトペテルブルク市芸術財団より"我が街の音楽家"の称号を授与。審査員だったイレアナ・コトルバシュ女史の薫陶を受ける。コンクール受賞式にて指揮者テミルカーノフ氏と共演。
フィンランドにおけるサマー・オペラ・フェスティバルにてヴァレリー・ゲルギエフ氏と共演。ロシア「白夜祭」でのコンサートに連年出演。ウクライナで開催された「日本文化週間」に出演。ニューヨークやイタリア等、海外でのコンサートに数多く出演。日本国内ではオペラ「フィガロの結婚」スザンナ役、「リゴレット」ジルダ役等、ミュージカルにおいては「オペラ座の怪人」クリスティーヌ役、「ウェストサイド・ストーリー」マリア役、「サウンド・オブ・ミュージック」マリア役等の主演を務める。「君が代」斉唱時の独唱、ベートーヴェン「交響曲第9番」ソリスト、バッハ「カンタータ」、モーツァルト「レクイエム」、サン=サーンス「クリスマス・オラトリオ」、ヴィヴルディ「グローリア」等のソリスト、「ロシア文化フェスティバル in JAPAN」への出演など幅広く活躍。
10代より音楽を通じた「音楽 de スマイルプロジェクト」をスタート。東日本大震災直後より被災地でのボランティア演奏と共に、「リユース楽器」支援に注力。現在は発展途上国の孤児院へ楽器支援を続けている。また、養護学校や療育園、子育て支援センター等において講師として音楽療育の実践を続けている。
国際文化交流活動の一環として、国内外において2015年より海外のアーティストと共にコンサートを主催、プロデュース。2020年より3年間、文化庁より助成金を得て数多くのコンサートを主催、プロデュース。
自然や子どもをテーマとした歌曲を中心に平和を歌う。ロシア歌曲、スラブ歌曲のスペシャリストとして、知られざる美しい歌曲を長年にわたり伝え続けている。

かつてマリインスキー劇場に所属したコロラトゥーラ・ソプラノの中村初恵が2010年発売のファーストアルバムから、14年を経てロシア・ウクライナ・ポーランド・チェコのスラヴ歌曲を録音した。最初のアルバムでも歌ったR=コルサコフの歌曲集《春》や、ラフマニノフ《春の水》《ここは素晴らしい》をここでも改めて彫りが深く情感豊かに歌い、珍しいプロコフィエフの歌曲も披露。彼女の声は日本人離れした真っ直ぐな根源的な力を感じさせる。特にプロコフィエフの太陽をテーマにした2曲と《月に寄せる歌》がおすすめ。
intoxicate (C)雨海秀和