Ken Yokoyamaがカバーアルバムをリリースする。横山健が参加しているバンドとしては、過去にBBQ CHICKENSが『Fine Songs, Playing Sucks』というカバーアルバムを2003年に発表しているが、Ken Yokoyamaとしては今作が初めて。日本のミュージックシーンではカバーアルバムが流行った時期があったが、その流れとはまったく別と言わんばかりのタイミングでリリースするのが彼ららしい。 (C)RS
JMD(2024/08/24)
Ken Yokoyamaがカバーアルバムをリリースする。横山健が参加しているバンドとしては、過去にBBQ CHICKENSが『Fine Songs, Playing Sucks』というカバーアルバムを2003年に発表しているが、Ken Yokoyamaとしては今作が初めて。日本のミュージックシーンではカバーアルバムが流行った時期があったが、その流れとはまったく別と言わんばかりのタイミングでリリースするのが彼ららしい。元々、こういった作品を出したいという意志はあったはずだ。
そもそも、横山健はカバーの名手である。誰もが知るポップスの名曲に驚くようなアレンジを加えたり、ゲラゲラと笑いたくなるようなスパイスを加えたり、かつてない解釈を施すことで新たな魅力を引き出したり、過去数十年以上にわたって自身のオリジナル曲と同じぐらい高い評価を得てきた。
しかし、今作は少々方向性が異なる。タイトルは『The Golden Age Of Punk Rock』。パンクロックの黄金時代の楽曲をピックアップした、明確なコンセプトをもつカバーアルバムだ。若手ではなく、彼らのようなベテランバンドがこうしてパンクロックの名曲と真正面から向き合うことに、パンクロックへの最大限のリスペクトと愛情を感じずにはいられない。
彼らのようにキャリアのあるメンバーが集まったバンドによるカバーアルバムだからこそ、その選曲は大きな注目を集めるはず。メンバー4人がアイデアを出し合って決めたというラインナップはNOFX、Bad Religion、LAGWAGON、No Use For A Name、ALL、RANCIDといった、往年のパンクキッズなら誰もが知るバンドばかり。それでもまだ「なんであのバンドは入っていないんだろう」と気になってしまうのはKen Yokoyamaだからこそ。さらに、楽曲のチョイスも非常に興味深い。なぜその曲を選んだのかそれぞれ理由を聞いていきたいぐらい好奇心を掻き立てられる。 サウンドからもオリジナルに対するリスペクトと愛情を感じる。意表は突かない。笑いもない。実直さが際立つアプローチに好感が持てる。どの曲が一番とは言えない。聴く人によって熱くなる曲は異なるだろう。リード曲がNOFX「Stickin' in My Eye」というのもいい。NOFXは今年10月に終了するツアーを最後に解散することが発表されている。彼らを敬愛する横山だからこそのチョイスだと言える。
今作をただのカバーアルバム、ただの企画盤だと受け止められないのは、そこにバンドの強い意志を感じるからだ。もちろん、こういう作品を出したかったという創作欲が一番だとは思う。しかし、これは長年にわたってシーンの先頭を突っ走ってきたKen Yokoyamaとそのメンバーからのパンクロックに対する恩返しでもあるのだ。
発売・販売元 提供資料(2024/08/22)
今年1月に新作を出したばかりの彼らから初のカヴァー集が到着。主に90sパンクから選曲され、横山健が誰に刺激を受け、自身の血肉にしてきたのか。それが明確にわかるルーツ探訪的な一枚だ。とはいえ、Hi-STANDARDと同時代に活躍していた面々が大半なのがミソ。つまりどのバンドもオンリーワンであることを研究模索し、切磋琢磨していた時代特有の輝きを帯びた原曲たちをKEN BANDが調理。アレンジをさほど変えない正攻法のカヴァーばかりで、突き抜けたパンク愛が炸裂しまくっていて胸を打つ。ブリンク182"All The Small Things"とゲット・アップ・キッズ"Holiday"のハマリ具合には驚いた。
bounce (C)荒金良介
タワーレコード(vol.491(2024年10月25日発行号)掲載)