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日記文化から近代日本を問う 人々はいかに書き、書かされ、書き遺してきたか

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フォーマット 書籍
発売日 2018年01月11日
国内/輸入 国内
出版社笠間書院
構成数 1
パッケージ仕様 -
SKU 9784305708885
ページ数 568
判型 A5

構成数 : 1枚

総論 研究視座としての「日記文化」─史料・モノ・行為の三点を軸として─(田中祐介)
1 はじめに
2 史料としての日記
3 モノとしての日記
4 行為としての日記
5 近代日本の日記文化を浮き彫りにし、相対化するために

第I部◉自己を綴ることの制度化

1章 教育手段としての日記が定着するまで─明治期少年の『日誌』にみる指導と規範─(柿本真代)
1 はじめに
2 日記の教育的価値
3 少年の『日誌』から
4 おわりに
2章 農民日記を綴るということ─近代農村における日記行為の表象をめぐって─(河内聡子)
1 はじめに
2 農村社会の近代化と「日記」
3 日記を綴る「農村青年」─その理想化をめぐって
4 教材としての「日記」─教育される「農村らしさ」
5 おわりに

第II部◉史料としての可能性

3章 昭和初期の役人日記における読書と政治的志向─マルクス主義と共産主義運動の間の二重の分断線─(新藤雄介)
1 問題の所在
2 先行研究と本章の方法
3 日記執筆者の個人生活
4 日記執筆者のメディア接触と読書傾向
5 マルクス主義の曲解への憤り
6 『戦旗』の左翼性の無効化
7 『中央公論』の発禁への関心
8 メーデーに対する期待と共産主義運動に対する否定
9 プロレタリア文学的視点の有無
10 無抵抗主義者としてのガンディー、ブルジョアの手先としてのガンディー
11 誤配と購入と読書の間
12 本章の知見

4章 精神科診療録を用いた歴史研究の可能性と課題─戦時下の陸軍病院・傷痍軍人療養所における日誌の分析を中心に─(中村江里)
1 はじめに
2 アジア・太平洋戦争期の軍事精神医療の概要と関連アーカイブズの現状
3 病床日誌の資料的特性
4 診療録を用いた歴史研究の可能性
5 診療録のもつ資料的困難と豊かさ―患者の「沈黙」から考える
6 おわりに

5章 多声響く〈内面の日記〉─戦時下の第二高等学校『忠愛寮日誌』にみるキリスト教主義学生の信仰・煩悶・炎上的論争─(田中祐介)
1 はじめに
2 第二高等学校忠愛寮と『忠愛寮日誌』
3 『忠愛寮日誌』の特徴─大正期を中心に
4 戦時下の『忠愛寮日誌』
5 結論

第III部◉真実と虚構

6章 昭和一〇年代の王朝日記受容と綴り方運動─堀辰雄・坂口安吾・川端康成における〈女性的なるもの〉のリアリティ─(川勝麻里)
1 はじめに
2 「純粋の声」と堀辰雄「姨捨」
3 堀辰雄「かげろふの日記」における「純粋の声」
4 綴り方運動と、日記における「純粋の声」
5 男女の声色―リライトなのか、代作なのか?―
【王朝日記受容・簡略年表】

7章 権力と向き合う日記─北條民雄と読者・文壇・検閲─(大野ロベルト)
1 はじめに
2 病める創作者の「心的日記」
3 読者・文壇への意識――理想と現実の葛藤
4 検閲との格闘
5 結論―川端という権力者

8章 「編集された日記」における学徒兵の読書行為─学徒兵遺稿集と阿川弘之『雲の墓標』をめぐって─(中野綾子)
1 はじめに
2 『雲の墓標』の「うしろの作者たち」
3 遺稿集に記された読書―『ドイツ戦没学生の手紙』から『雲ながるる果てに』まで―
4 『雲の墓標』における吉野次郎の読書
5 吉野次郎の空疎な読書
6 藤倉晶の「反戦的」な読書
7 おわりに

9章 ジュニア向け文庫の「非行少女の日記」─性をめぐる教化・窃視・告白─(康 潤伊)
1 はじめに
2 教化
3 窃視
4 告白と/の文学
5 おわりに

第IV部◉学校文化の中の「書くこと」

10章 大正期の教育実習日誌におけるまなざしの往還─師範学校生徒はいかにして教員となったか─(堤ひろゆき)
1 はじめに
2 先行研究
3 史料および教育実習の概要
4 生徒としてのまなざしと教員としてのまなざし
5 日誌を通した「書くこと」による規範化
6 おわりに

11章 書記行為から〈女学生〉イメージを再考する─白河高等補習女学校生の日記帳と佐野高等実践女学校校友会誌を題材に─(徳山倫子)
1 〈女学生〉とは誰なのか?―「女学生日誌」の所有者をめぐって
2 〈女学生〉と書記行為―校友会誌への着目
3 佐野高等実践女学校生徒の読書傾向―高等女学校生との比較から
4 作文には何が、どこまで綴られ得たか?
5 佐野高等実践女学校生徒の社会的階層と自己意識
6 作文における創作的な試み―読書行為との関わり
7 おわりに

12章 表現空間としての奈良女子高等師範学校─「婦徳」の内面化と詠歌の相関─(磯部 敦)

  1. 1.[書籍]

近代日本の日記文化論へ向けて、ここからはじめる。
虚実が入り混じり、読み手の解釈によりさまざまな相貌を見せるうえに、書き手が想像しなかった意味をも見出すことができるテクスト、日記。本書は知られざる他者の手による無数の日記に向き合うことで、多数の新鮮な「問い」の磁場を発見し、分析していく。
果たして人々は、日記をいかに書き、書かされ、書き遺してきたか―。
歴史学、文学、メディア学、社会学、文化人類学等、多数のジャンルの研究者たちにより、近代日本の日記文化を、史料・モノ・行為の三点を軸に明らかにしていく。
執筆は、柿本真代/河内聡子/新藤雄介/中村江里/川勝麻里/大野ロベルト/中野綾子/康 潤伊/堤ひろゆき/徳山倫子/磯部 敦/高 媛/大岡響子/宮田奈奈/西田昌之/松薗 斉/島利栄子(以上、執筆順)。

【本書を手に取る全ての方々へ。本書全体を通じて検討したのは、史料・モノ・行為の三点を軸に、近代日本の「日記文化」の実態の一端を明らかにすることであった。それは本書の副題に即して言えば、人々はいかに書き、書かされ、書き遺してきたかという大きな問いを一歩一歩検証するための各論的考察であったとも言える。しかし、「いかに」の問いの検証が遂に明らかにしえないのは、本書の特別対談でも話題になったように、人は「なぜ」日記を綴るのか―すなわち人間の書くことの欲望は何に由来するのかという根源的な問いである。人はなぜ、過去から現在に至るまで、そして未来においても、自己に関わる出来事を、のみならず自己の内面を言葉に托し、書き留めるのか。「書かされた」としてもそこに潜在する書くことの欲望を支えるものは何か。根源的であるゆえに容易に答えがたいこの問いに、本書を読む一人一人が考えを及ぼして下さることを期待する。本書で検討した「いかに」の事例が、そのための縁として役立つとすれば、望外の喜びである。】……「あとがき」より

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