Luck and Strange (Deluxe CD Box Set) ［2CD+Blu-ray Audio］＜完全生産限定盤＞

ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモア 9年ぶりの新作『Luck and Strange』(Deluxe CD Box Set)

『Luck and Strange』はブライトンとロンドンで5ヶ月余りをかけてレコーディングされ、デヴィッド・ギルモアの全曲新曲のアルバムとしては2015年の『飛翔(Rattle That Lock)』以来9年ぶりとなる。プロデュースを手がけたのは、デヴィッド・ギルモアとチャーリー・アンドリュー(ALT-Jやマリカ・ハックマン他)。きっかけはマーキュリー賞を受賞したインディー・バンド、ALT-Jを手がけたチャーリー・アンドリューのプロデュース・ワークに感銘を受けたデヴィッド・ギルモアが彼にインスタグラム上でダイレクト・メッセージを送ったことから始まる。これまでにない新たな制作過程についてデヴィッド・ギルモアはこう語る。「チャーリーを家に呼んだんだ。いくつかデモを聴いてくれて "ところでどうしてこんなところにギター・ソロがないといけないんでしょうか?"全部フェード・アウト?いくつかはただ終わらせる訳にはいかないんでしょうか?"なんて言っていた。彼は僕がこれまでやってきたことに対して、素晴らしいくらい知識やリスペクトに欠けているんだ。とてもダイレクトで、まったくもって萎縮していない。そこが最高にいいんだ。僕にとってはとにかくとてもいい。ただ言われるがままというのだけは嫌だからね」。
アルバムの歌詞の大半は、この30年間デヴィッド・ギルモアとコラボレーションを行ってきた妻のポリー・サムソンが担当。ポリー・サムソンは『Luck and Strange』のテーマについてこう語る。「年老いていく身の視点から書いたもの。死の必然性が絶えずありました」。デヴィッド・ギルモアも更にこう語る。「僕たちはロックダウンの最中、そして、その後もその手のことを話し合ったり考えたりしながら、たくさんの時間を費やしたんだ」。ポリー・サムソンはチャーリー・アンドリューと仕事を共にする経験によって自由になれたとも言う。「彼は曲の内容を知りたがるし、その曲で演奏する全員が、歌詞の内容を演奏に反映させることを望み、それがとてもうまくいきました」。(1/2)

アルバムは新曲8曲とともに、2000年代初期のインディー・デュオ、ザ・モンゴルフィエ・ブラザーズの「ビトウィーン・トゥー・ポインツ」の美しいリメイクを収録する。アートワークと写真は、高名なアーティスト、アントン・コービン (Anton Corbijn)によるもの。本作に参加したミュージシャンは、ベースのガイ・プラット(1987年以降ピンク・フロイドのレコーディングやツアーに参加)とトム・ハーバート、ドラムスのアダム・ベッツ、スティーヴ・ディスタニスラオ、キーボードのロブ・ジェントリーとロジャー・イーノ(ブライアン・イーノの弟)、ストリングスとコーラスのアレンジを行ったウィル・ガードナー、そして伝説的ドラマー、スティーヴ・ガッドも参加。タイトル曲「Luck and Strange」には今は亡きピンク・フロイドのキーボード奏者、リチャード・ライトもフィーチャーされており、2007年にデヴィッド・ギルモアの自宅にある納屋で行ったジャムの音源が使用されている。録音には2020年と2021年のロックダウン中にデヴィッド・ギルモアと家族が世界のオーディエンスに向けて行ったライヴ・ストリーミング"フォン・トラップト"から登場した者たちもいる。娘のロマニー・ギルモアは歌とハープを担当し、「Between Two Points」ではリード・ヴォーカルで登場。息子のガブリエル・ギルモアもバッキング・ヴォーカルで参加。また息子のチャーリー・ギルモアはアルバムの最終曲「Scattered」の作詞を担当し、アントン・コービンが撮影とデザインを手がけたアルバム・ジャケットのイメージはこの詞からインスピレーションを受けている。
本作はボーナストラックを追加収録した、2CD+Blu-rayの豪華CDボックス・セット。ポリー・サムソンがアルバムのレコーディング中に撮影した写真を独占掲載した、テームズ&ハドソン社制作のハードカバー・ブック(72ページ)を収納。

Luck and Strange is David Gilmours fifth solo record and only his third of the 21st century. The Pink Floyd guitarist clearly understands his lifes privilege; he has made some of rocks most memorable music, toured its biggest stages, and been named a Commander of the Order of the British Empire. He could easily coast along for the duration of his career. Instead, he has continued to tour, collaborated widely, advocated for numerous just causes, and donated the money from selling his home and guitars to charity. If he wants to make just one album per decade, hes earned the right. Appearing nine years after 2015s Rattle That Lock, Luck and Strange brings together a supporting cast thats both fresh and familiar, and also familial. To produce, he sought a more contemporary presence, Charlie Andrew (Alt-J), to augment veteran players like Guy Pratt (bass) and Steve Gadd (drums). Additionally, his daughter, singer and harpist Romany Gilmour, plays a significant role here and even takes the lead on standout "Between Two Points," a cover of the Montgolfier Brothers 1999 dream pop song. As on all his records since the 90s, Gilmours wife, Polly Samson, serves as lyricist and direct collaborator. The overriding tone of Luck and Strange is ruminative, though not overly melancholic, with richly imagined songs that explore uncertain futures ("A Single Spark"), nostalgia ("Sings"), marriage ("Dark and Velvet Nights"), and a generations halcyon days (the title cut, which is built around a pre-existing 2007 jam with late Floyd keyboardist Richard Wright). The arrangements, which frequently include orchestral and choral elements, feel fresher and nimbler than on his previous set, balancing out some of the albums introspection. And the youthful presence of Romanys (as well as his son Gabriels) vocals is a boon, lending to the largely collaborative feel. Still, its undeniably a Gilmour album, woven through with the elegant, lyrical guitar playing and haunted vocals that are his signature. ~ Timothy Monger

チャーリー・アンドリューを共同制作者に据えた9年ぶりの新作。老いや死をモチーフにした歌詞に呼応する沈静した空気感や、娘のロマニーが歌う"Between Two Points"など家族の貢献がもたらした柔和さなどが絶妙に融和、繊細さとディープさを併せ持つ厳かな音世界を生み出している。リチャード・ライトが自由闊達に鍵盤を操る表題曲をハイライトに挙げたい。
bounce (C)桑原シロー