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断腸亭日乗 (一) 大正六―十四年

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フォーマット 書籍
発売日 2024年07月17日
国内/輸入 国内
出版社岩波書店
構成数 1
パッケージ仕様 文庫
SKU 9784003600481
ページ数 462
判型 文庫

構成数 : 1枚

大正六(一九一七)年
大正七(一九一八)年
大正八(一九一九)年
大正九(一九二〇)年
大正十(一九二一)年
大正十一(一九二二)年
大正十二(一九二三)年
大正十三(一九二四)年
大正十四(一九二五)年

注解(多田蔵人)
総解説 『断腸亭日乗』について(中島国彦)
第一巻 解説 大正時代の「奥座敷」(多田蔵人)
本文について

  1. 1.[書籍]

大正六年から昭和三十四年、逝去の前日まで四十一年間、書き継がれた荷風の日記。明治・大正・昭和三代にわたる文豪の畢生の代表作にして近代文学の至宝。詩趣溢れる、鋭利な批評を込めた日本語で綴られる。全文を収載、注解、解説、索引を付した初の文庫版。第一巻は、大正六年から同十四年までを収録。(全九冊)

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41年にわたって書き綴った『断腸亭日乗』。いざレビューを書くとなると、どういった視点があるのか。日々折々に捉えた自然、人物、社会風俗、政治観、また、荷風は何をしていたのか、荷風は何を考えていたのか、荷風は何を食べていたのか、荷風はどんな女を抱いたのか、荷風は何を書き続けていたのか、さらに荷風の文章、漢語などネタは満載。
今レビューを書くとすると、現在話題となっているものを、当時荷風がどのように見ていたか、という視点がある。第一巻中の大正十二年と言えば、関東大震災であり、現在も関心が高い話題の一つが「災害」である。前年今でいう「異常気象」があったようで、「日本の気候年々不順になり行くはいかなる故か、なんとなく天変地妖怪の起こるべき前兆なるが心地す。」『日乗』で最初の地震の記述は大正十年で4回、「予言」をした大正十一年5回と増えていき、大正十二年九月「日将に午ならむとする時天地忽鳴動す」。地震を予知して記録したのではないだろうが、『日乗』には季節・自然の関する記述が多いことから、自然現象としての地震にも感度が高かったようだ。震災後も大正十三年・十四年と大きな余震が続いたことも記録している。
ただ、世間から隠遁していたことから、下町の被害についてはほとんど触れられない。第二巻昭和元年になって墨田区の「被服廠」跡地の大火災が語られる。この時点では日比谷公園の「至る処糞尿臭気甚しく」、また「震災後私娼大繁盛」と社会観察も怠らず。そして東京は「山師の玄関」であり、「灰燼になりしとてさして惜しむには及ばず」「近年世間一般奢侈驕慢貪欲」への「天罰」であって「何ぞ深く悲しむに及ばむや。」荷風らしい皮肉だが、まるで「ソドムとゴモラ」。現代の防災意識からすると他人事に移ってしまう。
荷風と「ペット」との関わりも、狷介な老人の隠れた細やかな心根を見せる話である。大正九年大久保で飼っていた牝犬の《玉》を思い出し「家畜小鳥などにつきての追憶を書かばやと想ひを凝らす」。大久保旧宅で飼い、「其務を尽くして恩に報いた」牝猫《駒》、「妓は去って還らず徒に人をして人情軽薄畜生よりも甚だしき」とぼやき。また、セキセイインコを買い求めてもいる。偏奇館には「三年来飼い馴らしたる青き鸚鵡」もいたのだ。

2025/02/23 kapaoさん
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