| フォーマット | 書籍 |
| 発売日 | 2024年07月17日 |
| 国内/輸入 | 国内 |
| 出版社 | 岩波書店 |
| 構成数 | 1 |
| パッケージ仕様 | 文庫 |
| SKU | 9784003600481 |
| ページ数 | 462 |
| 判型 | 文庫 |
構成数 : 1枚
大正六(一九一七)年
大正七(一九一八)年
大正八(一九一九)年
大正九(一九二〇)年
大正十(一九二一)年
大正十一(一九二二)年
大正十二(一九二三)年
大正十三(一九二四)年
大正十四(一九二五)年
注解(多田蔵人)
総解説 『断腸亭日乗』について(中島国彦)
第一巻 解説 大正時代の「奥座敷」(多田蔵人)
本文について

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今レビューを書くとすると、現在話題となっているものを、当時荷風がどのように見ていたか、という視点がある。第一巻中の大正十二年と言えば、関東大震災であり、現在も関心が高い話題の一つが「災害」である。前年今でいう「異常気象」があったようで、「日本の気候年々不順になり行くはいかなる故か、なんとなく天変地妖怪の起こるべき前兆なるが心地す。」『日乗』で最初の地震の記述は大正十年で4回、「予言」をした大正十一年5回と増えていき、大正十二年九月「日将に午ならむとする時天地忽鳴動す」。地震を予知して記録したのではないだろうが、『日乗』には季節・自然の関する記述が多いことから、自然現象としての地震にも感度が高かったようだ。震災後も大正十三年・十四年と大きな余震が続いたことも記録している。
ただ、世間から隠遁していたことから、下町の被害についてはほとんど触れられない。第二巻昭和元年になって墨田区の「被服廠」跡地の大火災が語られる。この時点では日比谷公園の「至る処糞尿臭気甚しく」、また「震災後私娼大繁盛」と社会観察も怠らず。そして東京は「山師の玄関」であり、「灰燼になりしとてさして惜しむには及ばず」「近年世間一般奢侈驕慢貪欲」への「天罰」であって「何ぞ深く悲しむに及ばむや。」荷風らしい皮肉だが、まるで「ソドムとゴモラ」。現代の防災意識からすると他人事に移ってしまう。
荷風と「ペット」との関わりも、狷介な老人の隠れた細やかな心根を見せる話である。大正九年大久保で飼っていた牝犬の《玉》を思い出し「家畜小鳥などにつきての追憶を書かばやと想ひを凝らす」。大久保旧宅で飼い、「其務を尽くして恩に報いた」牝猫《駒》、「妓は去って還らず徒に人をして人情軽薄畜生よりも甚だしき」とぼやき。また、セキセイインコを買い求めてもいる。偏奇館には「三年来飼い馴らしたる青き鸚鵡」もいたのだ。