ステレオフォニックスのフロントマン=Kelly Jones(ケリー・ジョーンズ)17年振りのソロ・アルバム『Inevitable Incredible』
UKの国民的ロック・バンドとして25年以上シーンの最前線で活躍し続けるステレオフォニックスのフロントマン、ケリー・ジョーンズの通算2作目となる17年振りのソロ・アルバム『Inevitable Incredible』(イネヴィタブル・インクレディブル)。これまで発表した12枚のアルバム中8作が全英チャート1位という、90年代以降のバンドとしてはコールドプレイの9枚に次ぐ記録を持つステレオフォニックス。そのヴォーカル、ギター、ソングライティングを手掛けるケリー・ジョーンズが2007年の1stソロ・アルバム『オンリー・ザ・ネイム・ハヴ・ビーン・チェンジド』以来となるスタジオ・アルバムを完成させた。デビュー以来ほぼ全ての曲をギター主体で曲作りをしてきたケリーだが、本作ではキャリア初のピアノとストリングス主体の厳かさで澄み切ったアンビエンスに包まれる弾き語りバラード・アルバムとなっている。2022年10月から12月にかけ、ピアノから生まれた心に残るメロディーと3ヶ月間格闘し、感情豊かな自己省察から生まれた残酷なまでに正直な歌詞をノートにしたためた後、ケリーはアルバム1枚分の素材が溜まったことに気づいた。これまで形にせずじまいだったものの完成を見届け、なおかつ作ったものの生のエッセンスを急いで完成する必要があると確信した素材である。そこで彼は北海の小さな離島に隠れた、人里離れた美しく広々としたノルウェーのスタジオ、オーシャン・サウンドに降り立つことになる。息を呑むような静けさと広大な荒野という環境で行われた6日間のレコーディング・セッションでは、深夜のピアノ・セッションから生まれた深い感情や内省を完璧な形で捉えていた。アルバムについてケリーは次のように語る。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2024/04/19)
「島のスタジオという人里離れた環境のおかげで、曲に命と息吹が吹き込まれたんだ。気を散らすものが何もなくてね。実に新しい経験だったよ。なるべき音の姿は予想していなかった。ただ感情やもろさを込めて書いたら、それらの曲に命が宿ったんだ。天気はものの1分で変わることがあるし、外の世界との接触もほとんどなかった。そういうすべてが相まって、こういう曲ができたんだ。本当に精神が浄化された経験だったよ。曲にすべてをさらけ出しっぱなしにしたような気がしているんだ」
全8曲からなる本作は、リスナーを夢中にさせる旅へといざない、現在の栄光に甘んじることのないひとりのアーティストの内面に迫っている。中でも特に美しく、感情に訴えかけるのがタイトル・トラックで本作からの1stシングルとなっている「Inevitable Incredible」だ。すぐにそれとわかるケリーの肩の力を抜いた優しい歌声は、ステレオフォニックスでお馴染みの力強いロック・アンセムによって影が薄れてしまうこともある彼のヴォーカルの幅広さや深みを際立たせている。映画のようにワイドスクリーン状に広がる静謐なサウンドスケープは、ケリーにとって新しく大胆な試みとなったのは言うまでもない。ソングライターとして数々の名曲を生み出してきた彼が、自身を安心領域から押し出し、傷つきやすい自分をありのままに表現した曲と言えるだろう。先日公開されたこの曲のミュージック・ビデオもケリー自身が監督を務めており、音楽が自身に語りかけてくるイメージを忠実に描写した美しい仕上がりとなっている。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2024/04/19)
ステレオフォニックスのフロントマンによる17年ぶり2枚目のソロ・アルバム。ギターでの弾き語りを軸にした前作に対し、今回はピアノとストリングスをバックに歌うクラシカルなチェンバー・ポップ作品に。言うまでもなく彼の作り出すメロディーと歌声は美しいが、バンドでのそれとは一味も二味も違う高貴で感傷的な雰囲気を纏っている。まさにソロならではの作品と言えるだろう。
bounce (C)赤瀧洋二
タワーレコード(vol.485(2024年4月25日発行号)掲載)