NY出身のインディー・ロック・バンド、DIIV(アンドリュー・ベイリー、コリン・コールフィールド、ベン・ニューマン、ザカリー・コール・スミス)の4枚目のアルバムがfantasy recordsからリリース!
クリス・コーディのプロデュースによる本作は4年ぶりとなる新作。バンドが壊れそうなときもあったというが、自分たちのサウンドを押し進め、挑戦的なレコードを作り、バンドを初めて民主主義として扱うことを目指し、DIIVは個人としても集団としても野心的な旅を始めたという。この旅では、家族、友情、経済といった多くの複雑な力学が絡み合い、疑惑、恨み、傷ついたエゴ、不安な疑問と相まって、互いの関係にほころびが生じた。その結果、新たな叙情性と音楽的な深みを掘り起こした10曲が誕生した。このアルバムは、耐えること、今この瞬間、ゆっくりと沸騰する湯の中にいながら、向こう側に何かを思い描くことへの魅惑的な証しである。
末期の資本主義と圧倒的なテクノロジーの進歩の残酷な現実を探求するスナップショット集という本作。10曲のダークでまばゆいトラックを通して、DIIVは、その壮大で催眠的なシューゲイザーを拡張しながら、希望、美しさ、そして再生の輸送的で官能的な作品を作成するために、異常な感性と目的の深さで様々な角度から崩壊を記録している。
DIIVの新たな音の領域を探求している。バンドはカセットテープを集めてカタログ化し、テープループを作り、サンプル、奇妙なギターのチューニング、粗雑なシンセサイザーを使用した。バンドがこれまで作った中で最も「ジャンル」の少ないレコードだ。このアルバムは、DIIVの芸術的進化を示すものだ。テーマ的にも、『Frog In Boiling Water』はディストピア的でダークな新境地を開拓している。
沸騰したお湯の中にカエルを落とせば、もちろん必死によじ登ろうとするだろう。しかし、ぬるま湯の鍋にそっと入れ、弱火にすると、カエルは極めて平然と浮かんでいる。お湯がだんだん熱くなってくると、カエルは私たちが熱いお風呂に入るのと同じように、静かな昏睡状態に陥り、やがて微笑みを浮かべながら、抵抗することなく茹で殺されてしまうのです」。
「この比喩は、末期の資本主義の下での、ゆっくりとした、病的な、そして圧倒的に平凡な社会の崩壊についてのものだと私は理解している。このアルバムは、多かれ少なかれ、現代の状況を様々な角度から捉えたスナップショットのコレクションであり、この崩壊がどのように見えるか、そしてより特に、どのように感じるかを浮き彫りにしていると思う」。とバンドはコメントしている。
発売・販売元 提供資料(2024/03/18)
NY発サイケ・バンドによる5年ぶりの4作目は、C86×クラウトロックと形容された初期の彼らを想像すると驚くだろう。重たいリズムと悪夢を見ているかのようなギターはストーナー・ロック的で不穏。〈茹で蛙〉を意味するタイトルは、気が付けば後戻りできない状態になってしまった現代社会を表しているそうで、この世=地獄という眼差しが貫かれたアルバムだ。力作。
bounce (C)田中亮太
タワーレコード(vol.487(2024年6月25日発行号)掲載)
2010年代のニューゲイザー代表バンドのダイヴの新作は、個人の社会への価値観の転換期である現代において、表面化された闇を隠すことなく表現していると思われます。それは資本主義と民主主義の発展の末の社会がユートピアではなく、嘘と欺瞞を正義とするディストピアであり、それが空想ではなく現実であるということ。
それを反映したかのようにアルバム全体が暗くて端正、硬くて美しいメロディーの海を漂う船のようで、まるで突きつけられた現実というものの影絵を見ているかのように感じます。
私は過去のロックバンドが持ち合わせた反体制的要素を冷笑的視点で作品にする彼らのような都市型アーティストこそ現代ロックに必要な精神だと思います。
このような個人と個人の間にある社会を作品に取り入れる知的で文化的なロックバンドは日本には少ないと思いますので、ぜひ彼らのインタビュー記事とともにおすすめします。