ユンディによる《モーツァルト:ソナタ・プロジェクト》!
そこにあるモーツァルトは「こんなにも孤独で、こんなにも美しい・・・」
2000年のショパン・コンクール第1位、現代で最も称賛され注目されるピアニストのひとり、ユンディ。2020年にリリースした、ユンディ初のワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団を弾きぶりした「ショパン:ピアノ協奏曲」では、力強くスピーディーさを持つも、音楽の流れはどこまでも優しく甘美なタッチで奏で、ユンディの新しい表現が現われていました。
このモーツァルトでユンディは、ショパンが本当に愛した音楽はモーツァルトであったことを証明しています。ショパンが死の床でささやいた「私を偲んでモーツァルトを弾いて」ということばは、モーツァルトの音楽の本質を最もよく表しています。ユンディはモーツァルトの音楽に対し「人間の魂に道徳的美徳や音楽について教える可能性を秘めている」と語っており、この2人の作曲家の人生・・・魅惑的な物語と潜在的な可能性を垣間見た・・・疾走感を重ね合わせながら、そうした曲に併せ持つ、有名なトルコ行進曲付きのイ長調のソナタ、2つの短調のソナタ、ハ短調の幻想曲を、ピアノで語っていきます。
最近の斬新で自由で華麗な演奏による、一瞬にして驚かせる音楽はここには一切ありません。もともとユンディは「超絶技巧を用いガンガン弾きまくる」というタイプではなく、「曲の奥深くまで分け入り、抒情性を大切にしながら詩的な語り」を大事にしています。このモーツァルトでも、ひとつひとつの音をつむぎ出すかのようで、じっくりと味わい深く聴かせてくれます。それは冷たく厳しくも感じさせるかもしれません。しかし、じっくりとしたテンポによるタッチには温かみが感じられ、驚異的なほど音のひとつひとつが明瞭で、風通しが良く、メロディの対話が絶妙な間隔で行われる。そこにあるモーツァルトは、「こんなにも孤独で、こんなにも美しい」と感じることでしょう。
ワーナーミュージック・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2024/02/09)
Yundi, sometimes YUNDI or Yundi Li, had a hiatus in his career apparently caused by the long reach of the Chinese government, but now he is back with the beginning of a Mozart project. The album is supposed to be devoted to the composers Salzburg sonatas, though the Fantasy in C minor, K. 475, and associated Piano Sonata in C minor, K. 457, date from well into Mozarts years in Vienna. All three works run somewhat counter to type in an age where Mozart performances, partly under the influence of the historical performance movement, tend toward exciting, percussive approaches. Yundi is quite precise, with little variation in attack or tempo; even the dramatic C minor works dont seem to point to Beethoven the way they often do. In the big variation set that makes up the first movement of the Piano Sonata in A minor, K. 331, Yundi brings out some striking details. Sample the fourth variation, about a minute in, for an example. For many listeners, the Rondo alla Turca finale will be underpowered, but this may be a matter of taste. Sample, listen, and await further installments. Yundi has lost none of his considerable charisma, and this release made classical best-seller lists in the spring of 2024. ~ James Manheim
Rovi
2000年、第14回ショパン国際ピアノコンクールで史上最年少優勝を果たしたユンディ。今回新プロジェクトとしてモーツァルト:ソナタ・シリーズが始動します。記念すべき第1弾は第11番《トルコ行進曲付き》に、第8番と第14番。適度に軽やかで、音が最初から最後まで安定の一音一音ずつクリアなタッチがモーツァルトと親和性が高い。細かいパッセージもムラのない徹底したテクニック。繊細に、丁寧に音楽を作り上げているのがひしひしと感じられ、その音の世界に気付いたら入り込んでいた。
intoxicate (C)上村友美絵
タワーレコード(vol.169(2024年4月20日発行号)掲載)