トロピカルでスピリチュアル、ゆるーく沁みてくるアコースティックなハイチルーツの女性SSW。
オールド・タイムなストリングス・バンドCarolina Chocolate Dropsやアメリカーナ女傑ユニットOur Native Daughtersで活躍。チェロ、バンジョー、ギターなどを操る弦楽器奏者にしてシンガー、レイラ・マッカラのソロ4作目。ブルーズ、フォークなどの米国ルーツ音楽にハイチの伝統音楽、アフロ・ビート、トロピカリア期のブラジル音楽をミックスしたアコーティック・サウンドのユニークさと、ゴスペルに通じる敬虔さを湛えたヴォーカルの清々しさが高評価だった前作『BREAKING THE THERMOMETER』の流れを継承しつつも、前作と大きく異なるのは楽曲制作の初期段階からバンドが関わったこと。レイラのインスピレーションをバンドメンバーと共に楽曲に仕上げていった様子は今作が濃密な"バンドサウンド"になっていることから伺える。特に、2020年からバンドに加わったネイハン・ジベルのギターが強烈なアクセントになっており、ファズっぽい歪んだ音色でポリリズミックなリフでグルーヴを牽引する(3)「Take Me Away」、(8)「Love Me Mad」、サイケなソロを弾きまくる(5)「Tree」の後半部はジャム・バンド的展開をみせ聴きもの!そんな尖った聴きどころに新鮮味を感じつつもやはりアルバムの(6)「Sun Without The Heat」、(9)「Give Yourself A Break」。ラストはピアノとチェロの伴奏によるスロー(10)「I Want To Believe」で厳かに終幕を飾る。
タワーレコード(2024/05/10)
現在はニューオーリンズを拠点としているハイチ系シンガー・ソングライター兼マルチ奏者の5枚目のアルバム。コンセプチュアルだった前作から一転、熱気溢れるスタジオ・セッションを封じ込めている。アメリカーナとアフロビートおよびラテンの融合。ジャジーなバラードもしっとりと聴かせつつ、ほぼ全曲でエレキ・ギターが鳴る。奔放なプレイのかっこよさは圧倒的の一言。
bounce (C)山口智男
タワーレコード(vol.486(2024年5月25日発行号)掲載)