アメリカン・フォーク界の至宝:エリザベス・コットンの素晴らしいギター・プレイをたっぷりと収録した一枚。 (C)RS
JMD(2024/01/20)
アメリカン・フォーク界の至宝:エリザベス・コットンの素晴らしいギター・プレイをたっぷりと収録した一枚。
アメリカン・フォーク界の至宝:エリザベス・コットン(1895-1987)。彼女の作品と言えば、あの名曲「フレイト・トレイン」も収録された『フォークソングズ・アンド・インストゥルメンタルズ・ウィズ・ギター』を真っ先に思い浮かべられる方も多いでしょう。『フォークソングズ~』は、美しく個性的、かつテクニカルなギター・プレイと素朴で味わい深い歌声に彩られた世紀の名盤ですが、今回はそんな彼女のギター・プレイをじっくりと、深く堪能したいという方におすすめの一枚『シェイク・シュガリー』をご紹介いたします。
エリザベス・コットンはノース・カロライナ州出身のブルース/フォークの黒人女性シンガー・ソングライター/ギタリスト/バンジョウ奏者。8歳で歌を歌いはじめ、11歳で自ら稼いだお金でギターを手に入れ独学で奏法を修得しましたが、実は彼女は左利き。本来ならばギターの弦を逆に張り替えなければならないところなのですが、そのまま右利き用ギターで修得したため、一風変わった2フィンガー・スタイル奏法が編み出されることとなったのです。このスタイルは、後に〈コットン・ピッキング〉と呼ばれるように。また、ローティーンより作曲を開始していますが、彼女の筆によるフォーク・ソングの名曲「フレイト・トレイン」は、すでにこの時代に誕生していました。
特異なピッキング・スタイルと名曲を、図らずも早々に生み出したエリザベスでしたが、大人になると日々の生活の追われるようになり、音楽は忘却の彼方へ。しかし、デパートで働いていた時期に、ひょんなことがキッカケでフォークの名門シーガー家と懇意になり、メイドとしてー家に従事することになります。日々を送る中で彼女はシーガー一家に触発され、音楽への興味が再燃。再びギターを握るようになりました。この時エリザベスは、すでに60代を迎えていましたが、彼女のプレイの素晴らしさに感銘を受けたマイク・シーガーの後押しもあり、音楽家としてデビューすることが決定しました。そこで誕生したのがアメリカン・フォーク・シーンに名を刻む不朽の名作『フォークソングズ・アンド・インストゥルメンタルズ・ウィズ・ギター』(ライス CD:FLR-285/同 LP:FLR-4414)1958年オリジナル・リリース)だったという訳です。こちらには、後にPPMやボブ・ディラン、ジョーン・バエズらがカヴァーしたことでも知られるようになった名曲「フレイト・トレイン」も収録されていました。 (1/2)
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そんな『フォークソングズ~』に続いてリリースされたのが、この『シェイク・シュガリー』(1965年オリジナル・リリース)だったのですが、今回ご紹介するのは2004年にスミソニアン・フォークウェイズからリリースされたリイシュー盤。65年作に未発表曲10曲を追加した、全26曲で構成されています。タイトル曲である「シェイク・シュガリー」は「フレイト・トレイン」に並ぶ彼女の人気ナンバーであり、グレイトフル・デッドやボブ・ディランなどがレパートリにしていることでも有名。本作に収録されたコットンのヴァージョンでは、彼女のひ孫:ブレンダ・エヴァンス(当時まだ12歳)があどけなくも美しい歌声を聞かせ、コットンがギター伴奏を務めています。この他にも、即興によるバンジョウ・スタイルのギター・ピッキング~アパラチアの有名バンジョウ曲'Georgie Buck'へと繋げられた(8)、流麗な指捌きが印象的なオープンDチューニングの(15)、そして合衆国南東部の田舎の小さな教会を想わせるような聖歌(25)(26)など、魅力的な楽曲が続々と登場。彼女のあの歌声も大きな魅力の一つとなっていますが、収録曲の多くは短いギター・インストゥルメンタルで構成されているということもあり、彼女の美しいギター・プレイや独特なテクニックなどをじっくりと楽しみたい、紐解きたいという方には、まさにうってつけの一枚です。 (2/2)
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