孤高のジャズシンガー「mJ」の衝撃デビュー作。
ジャズを歌い始めて1年以内でCDデビューした男の、甘く太く倍音たっぷりのヴォイスを実力派ミュージシャンがサポート。生演奏同時一発録音の本物ジャズ、を現代の新作として聴ける唯一のアルバム。
「日本人の」という枕詞は要らない。ジャズボーカルの真髄は国籍や性別、人種を超えて人類の三半規管へ響いてくる。クリーム期のエリッククラプトンによるフロントピックアップの音やクラフトワークのライヴにおけるアナログシンセの音、のように太く甘く、倍音たっぷりのバリトンヴォイスは、普遍的な魔法に満ちている。魔法と言えば、ジャズを歌い始めて1年以内にデビューという、その才能も魔法じみている。
バックを支えるのは、遠山晃司(ベース)、森田潔(ピアノ)、野崎理人(ギター)という、ジャズ界の実力派。遠山のアレンジが光り、そこへ森田のピアノが色彩を添え、野崎のカッティングがリズムの指針を刻んでいく。野崎が刻むエピフォン社製ゼニスは、我々が忘れかけていた、アコースティック・ジャズ・リズムギターの素晴らしさを、蘇らせてくれる。
スタンダードジャズだけにとどまらず、バカラックの世界を昨今の世界情勢へのメッセージとしてM-6、そしてボーナストラックでは唯一のオリジナル日本語楽曲を聴かせる。これが、まるで細野晴臣の遺伝子が、ジャズのマナーで育てられたようで美しい。
オーバーダブ無し、ボーカルを含めて全員が同じ部屋(ブースも使用せず)で演奏し、ジャズの空気を一切逃さずにレコーディング。驚きだが、最初はアナログテープで作業が進められた。しかし、ワウフラッターの影響で2曲のみで断念。その2曲は、現在YouTubeで聴くことができる。
サッチモ、クロスビー、シナトラ、ベネット、そしてブロッサム・ディアリー。彼女彼等との同じような出会いを、この日本において、mJは与えてくれる。
冒頭では「ク二とかセイベツとか関係無い」と恰好を付けて書いてしまったが、正直に言おう。現代の日本で、ここまでジャズを歌えるジャズシンガーが居たことは、今、同じく日本に居る一人として嬉しくて嬉しくて仕方が無い。先日亡くなられた陶芸家、荒田耕治のコーヒーカップを使ったジャケットも良い。
発売・販売元 提供資料(2024/01/09)