ウィーン～ジョイフル・アポカリプス

第一次世界大戦というヨーロッパの没落、神格化と黙示録の両方を表現した正真正銘の音楽的メタファー。 また、シューベルト、リスト、マーラー、クライスラーの名前も見えますが、これらはすべて、この神話の都市にのみ属する一種のノスタルジーに満ちています・・・オーレリアン・ポンティエ

「Joyful Apocalypse=喜びの黙示録」とは、なんとも日本語では形容し難いタイトルではありますが、20世紀初頭のウィーンの爛熟した雰囲気を表すには、これ以上ふさわしい言葉はないかもしれません。
アルバムを紐解くと、冒頭からあのおなじみの『こうもり』の旋律が溢れだしてきます。もちろんグリュンフェルトの編曲ですから、これは一筋縄ではいきません。ピアノの鍵盤を端から端まで使い切るかのような超絶技巧のオンパレード。そうです。このアルバムは"ピアノ・トランスクリプション"マニアの方にもおすすめできる、優れものの1枚。曲目一覧には、ゴドフスキーやシュルツ・エヴラーの名もあり、その筋の人も嬉しくなるような曲が並んでいます。
アルバムのほとんどを占めるのはワルツであり、何かに憑かれたかのように踊り狂う人々の姿が目に浮かぶかのようです。作曲家の中にはラフマニノフやチャイコフスキーの名が連ねられているのは、ウィーン以外に住む人たちにも、この狂乱が伝播したということでしょうか。例え異質な作品であったとしても、これらがウィーンの甘い雰囲気にすっかり飲み込まれてしまっているのがお分かりになるでしょう。19世紀初めのシューベルト作品は、ワルツの祖とでもいえるもの。「クッペルヴィーザー・ワルツ」はリヒャルト・シュトラウスが書き写したことでも知られています。
ウィーンだけではなく「頽廃」を代表するマーラーのアダージェットや、少しだけ落ち着いた雰囲気のシェーンベルクの小品もちりばめられ、最後はラヴェルの「ラ・ヴァルス」で締めくくるというまさに狂乱の1枚。変化に富んだアルバムを最後まで余すことなく聞かせるオーレリアン・ポンティエの才覚にも驚くばかりです。
ワーナーミュージック・ジャパン

PIanist Aurelien Pontier says that he "designed this album as an act of homage to the Vienna of the turn of the 19th and 20th centuries." The "joie de vivre" involved is not only the subject of nostalgia but is "full of ambiguity," and Pontier is after works that convey the seeds of what was to come as well as cheerful depictions of Vienna nights. Thus, the program leads from the likes of Godowskys Alt-Wien to a rather bold transcription of the Adagietto of Mahlers Symphony No. 5 in C sharp minor. It is not totally clear that everything hangs together. Schubert, who is represented three times, wasnt planning on any apocalypse, and his Waltz in G flat major ("Kupelwieser-Walzer") appears in a transcription by Richard Strauss, a bit more of whose music might have been apropos. Yet, Pontier is absolutely right to focus on the waltz, which passes through incarnations in the works of Liszt, Tchaikovsky, Fritz Kreisler, and Rachmaninov, ending with the post-catastrophe La Valse of Ravel (who did explicitly deny any extramusical intent). Has any other single genre ever lasted so long? Pontier seems to suggest that the waltz was, in a sense, an embodiment of Vienna itself. Warner Classics delivers excellent sound from the Salle Colonne in Paris on an album that adds some intriguing angles to the usual nostalgia. ~ James Manheim