大胆に、そしてしなやかに自身のルーツと今現在生きる世界を融合させた色鮮やかなフュージョンR&B で注目を集めるタミル系スイス人アーティスト、プリヤ・ラグー。
幸せを見つけるための内なる旅をテーマにした待望のデビュー・アルバム『SANTHOSAM』で彼女は更なる音楽的高みを目指す――!
スリランカ内戦から逃れてきた両親の元、スイスで生まれ育ったタミル系スイス人アーティスト、プリヤ・ラグー(Priya Ragu)。ロックダウンの最中、兄Japhna Goldと共に、彼女の今日いる場所の基盤となるいくつもの楽曲をリモートで制作した彼女は2021年にデビュー・ミックステープ『damnshestamil』をリリース。彼女が"Raguwavy"と呼ぶ、R&Bをベースにアーシーでどこかアンニュイでソウルフルなヴォーカル、腰を思わず揺らしてしまいそうになるダンス・ビートやタブラのリズム、そしてタミール音楽のメロディーを大胆に融合させたサウンドは、NMEやザ・テレグラフをはじめとする英国メディアから高い評価を集めた。
その彼女が待望のデビュー・アルバム『SANTHOSAM』をリリースする。タミル語で"幸福"を意味する本作は、『damnshestamil』同様、兄でプロデューサーでもあるJaphnaとのコラボレーションによって制作され、二人が作り出すタミル的な要素と西洋的な要素を鮮やかに融合させたサウンドをより大胆に進化させている。アルバムにはゴージャスで多彩な音楽的テクスチャーと堂々としたディスコ・サウンドともに切迫した政治的テーマ、そしてプリヤのポジティブなスピリットが不思議な調和を見せ、彼女の"Raguwavy"サウンドを新たなる高みへと導いているのだ。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2023/09/29)
アルバムからのシングル「Vacation」は、陽が燦々と輝くプールサイドが似合う高揚感溢れるサウンドに、期待からくるプレッシャーに押しつぶされたり、燃え尽きたりすることへの危険を訴える歌詞が加わった1曲だ。この曲には、ツアーの音楽制作活動を並行させていたために、限界を感じたプリヤ自身の経験が反映されているという。『SANTHOSAM』にはこの他、アルバムの幕開けを飾る、「なぜ結婚してないのか」と問いかけるプリヤの祖母の声をフィーチャーした「Ammama's Note」や、自身の道を切り拓こうとする意志をタンブラ・ビートや颯爽としたシンセ・サウンドが鳴り響く多幸感溢れるサウンドで彩った「School Me Like That」、そしてジョージ・フロイドの死から始まったブラック・ライヴス・マター運動に触発されて制作した怒りに満ちた「Black Goose」、さらに自由と解放、平和を訴える「Let Me Breathe (Reprise)」などメッセージ性の強いテーマの楽曲が並んでいる。しかしそれ以外にも、ダンスフロアのディスコ・パワーを取り入れた「One Way Ticket」や、ブタペストのオーケストラの演奏によるインドの作曲家バラによるストリングス・アレンジをフィーチャーした「Power」、そしてプリヤ、Japhnaと二人の父が一緒に曲作りを行うという家族の毎年の伝統から生まれた「Mani Osai」などの楽曲が収録されている。
幸せを見つけるための内なる旅をテーマにした『SANTHOSAM』。このアルバムでプリヤは自分だけでなく、他の人たちにもこの満足感を広めたいと考えている。「音楽とはそういうものだと思う」と彼女は言う。「このアルバムは、私が幸せを見つけるための物語。人生の目的を見出す助けにもなった作品なの。もしかしたら他の人にとっても助けになるアルバムになるかも知れない」そう思いたいと彼女は語るのだ。
プリヤ・ラグーの新たなる音楽的冒険で彼女が見出した幸せ――その答えが本作にある。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2023/09/29)
スリランカ内戦から逃れたタミル人を両親に持つスイス育ちのアーティストが、ミックステープに続いて初の公式アルバムを完成。自身のルーツと欧州シーンの多様性をフルに活かしながらポップにまとめる手捌きは今回も抜群だ。タブラのビートを基調にしたメロウなR&B"School Me Like That"、古典"Bam Bam"を下敷きにしたダンスホール・レゲエ調の"Vacation"や、軽やかな2ステップ"Easy"、タミル語を交えつつラップするUKドリル風味の"Adalam Va!"など、ヴァーサタイルで洗練されたオリエンタル情緒が満載。タミル語で〈幸福〉を意味するという表題通り、気負いなく楽しめる快作だ。
bounce (C)池谷瑛子
タワーレコード(vol.480(2023年11月25日発行号)掲載)